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サーキュラーエコノミーと分解者たち
イベント終了
トークイベント
「分解し崩壊し始めることを生まれるというのではないか」(藤原辰史『分解の哲学』)
私たち人間を含む動物は食べなくては生きていけません。私たちが食べるのは、体組織の形成のために必要なタンパク質をはじめとした物質を摂取するためです。私たちは植物や他の動物を食べることで、その体内に含まれるタンパク質を摂取しているのです。
他方、植物はといえば、地中に含まれるアンモニアを根から吸収することでアミノ酸やタンパク質を合成します。しかし、地中を含め、自然界にあるアンモニアは一部の微生物によるはたらきか、雷や野火などの高エネルギー状態からしか生成されず、自然に生じる量には限りがあります。そのため人類は、19世紀の産業革命によって人口の大規模な増加が起こった際、肥料としてのアンモニア不足という問題に直面したのです。
その危機を救ったのが、20世紀初頭のドイツで開発されたハーバー・ボッシュ法と呼ばれるアンモニアの人工合成法でした。それ以来、化学的に生成された肥料を用いた農業が可能になり、農業生産性は大幅に向上。20世紀の爆発的な人口増加を支える一因となりました。
それと同時に、化学肥料が利用され始めたことで失われたのは自然の循環に基づく生産・消費・分解のプロセスでした。微生物は、動植物の遺体や排泄物を分解することで有機的な物質を無機状態に戻す役割を担っていました。その「分解」の過程があることではじめて、次の生命が「生まれてくる」環境を整えていたのです。冒頭に引用した、農業史を専門とする藤原辰史氏の「分解し崩壊し始めることを生まれるというのではないか」という言葉は、産業革命以降の工業化に進んだ過程で生産と消費の構図が生まれ「分解」が視野の外に置かれてしまった現在をあらためて見つめ直し、分解を起点とした分解・生産・消費の循環プロセスを考えるきっかけとして捉えることが可能でしょう。
分解を起点に考えるサーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーを考える際、この分解を起点とする分解・生産・消費の循環プロセスと向き合うことは必然でしょう。一方で、従来どおりのビジネス文脈で考えたとき、「分解」はお金になりにくく、コストが膨らむ要因になったりもします。たとえば、食料残渣をコンポストすることも堆肥化までに時間を要しますし、その堆肥を用いて農作物を育てるのにさらに時間がかかります。必要な時間コストが分解の価値をビジネススキームにのせることをむずかしくしてしまいます。解体した建物の建材の再利用、廃炉線跡地の活用などでもふたたび生産・消費のサイクルに移行するための「分解」をビジネスの文脈に載せるためには、スキームを変える工夫が必要になります。
しかし、そんな「分解」の問題も技術やデザインで解決することが可能です。たとえば、食料残渣や非可食部として廃棄されていた部位の再利用も、ASTRA FOOD PLAN株式会社の乾燥・殺菌技術を用いると、短時間で乾燥・殺菌させて粉末状にでき、別の食材に転換することが可能です。時間が短く済むのに加え、肥料ではなく食品として売ることで販売価格も高く設定でき、ビジネスのスキームに載ってきます。
今回のイベントでは、ASTRA FOOD PLAN株式会社をはじめ、世田谷区の小田急線線路跡地で循環のあるまちづくりを住民参加で進めるシモキタ園藝部、微生物多様性を高める都市デザイン事業を行っている株式会社BIOTAからゲストをお呼びし、技術をもちいたり、視点を変えたりすることで「分解」の過程を私たちが生きるための循環のプロセスを再発明されている事例をご紹介します。
ゲストトークのあとは、参加者の方々を交えたディスカッション機会を設けることで、これからサーキュラーエコノミーの取り組みが広がっている1つのきっかけとなる場になればと期待しています。
※登壇予定の企業は、展示会「分解可能性都市 ー 自然と共生する都市生活考」(2024年8月27日-9月13日:FabCafe Tokyo、2024年10月1日-10月23日:FabCafe Kyoto)に出展しています。
※本イベントは、「SMBC Sustainability Forum 2024」の一環として開催されます。
開催概要
日時:2024年10月10日(木) 14:00-17:30
トークセッション 14:00-15:00、
ワールドカフェ形式のディスカッション+ネットワーキング 15:10-17:30(会場参加者のみ)
場所:【リアル会場】ロフトワーク渋谷 10階
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア 10F
MAP:https://bit.ly/3AD6EDJ
【オンライン配信】Zoomウェビナー
主催:株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社三井住友銀行、株式会社ロフトワーク
定員:リアル会場:30名、オンライン会場:100名(応募多数の場合は抽選)
参加費:無料
<こんな方におススメ>
・サーキュラーエコノミーの実現のために分解技術を必要とする事業者
・サーキュラーエコノミーに寄与する分解技術を有する事業者
・サーキュラーエコノミーに関心のある企業・団体の担当者
・その他、サステナビリティや環境技術に興味をもっている方
以下記載の注意事項をご確認の上、お申込ください。
ご注意
・イベント当日は、メディアによる取材が行われる可能性がございます。参加者の皆さまの姿が写真やビデオに映り、報道や広報に使用される場合がございますので、予めご了承ください。取材内容が公開される際には、プライバシーに最大限配慮いたしますが、映り込み等に関するご理解とご協力をお願い申し上げます。
・オンラインでのご参加の場合、Zoomでのウェビナー参加が必要となります。
ご参加の際は事前に参加または視聴可能かご確認をお願いします。
・お申込多数の場合、抽選となる可能性がございます。ご了承ください。
・参加、視聴URLはイベント前日までにご連絡いたします。
・参加者の皆さまの写真や議論の内容は後日、loftwork.comおよびGREEN×GLOBE PartnersのWebサイトに掲載する場合がございます。
・プログラムは、予告なく変更される場合がございます。
・本イベントの取材をご希望の方はGGP事務局(ggpartners_info@ea.smbc.co.jp)までお問い合わせください。
申込方法
プログラム
14:00-14:10 | イントロダクション |
14:10-14:55 | ゲストプレゼンテーション |
14:55-15:00 | オンライン向けクロージング |
15:00-15:10 | 休憩 |
15:10-16:10 | (リアル会場でご参加の方々のみ) 会場での参加者を交えたワールドカフェ |
16:10-16:20 | 休憩 |
16:20-17:30 | (リアル会場でご参加の方々のみ) 登壇者と参加者のネットワーキング |
登壇者プロフィール
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ASTRA FOOD PLAN 株式会社 代表取締役社長 加納 千裕
埼玉県出身。食品関係事業をする父と栄養士の母の影響で幼い頃から食に興味をもち、これまで一貫して食に関わるキャリアに携わる。女子栄養大学 栄養学部を卒業後、株式会社ロック・フィールドで製造・販売に従事。その後、株式会社榮太樓總本鋪で商品企画・新ブランド「にほんばしえいたろう」の立ち上げを担当し、150余年続く和菓子ブランドのリブランディングも経験。株式会社塚田農場プラスでは弁当の商品開発に従事。キャリアの過程では、父である加納勉が創業した会社において、過熱水蒸気によるピューレ製造技術を用いた商品開発から販売営業まで一貫して担い、過熱水蒸気オーブンの法人向け営業にも従事。同社退職後は、スーパーの精肉店コーナーや、食に特化した家政婦も経験し、2020年8月、過熱水蒸気技術を用いた新事業としてASTRA FOOD PLANを設立。代表取締役社長に就任。 アマチュアオーケストラ「ユーゲント・フィルハーモニカー」のバイオリン奏者。20歳で唎酒師の資格取得し、「日本酒会」を主宰する。
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シモキタ園藝部 川崎 光克
1993年、北海道上富良野町生まれ。
2016年東北大学工学部建築社会環境工学科卒業
2019年東京大学大学院新領域創成科学研究科修了(環境学)
大学院在学中に、南米エクアドルの建築事務所AL BORDE Arquitectosにて半年間インターンとして働き、住民参加型の建築プロジェクトに関わる。2019年より、一般社団法人シモキタ園藝部の創設に携わり、現在同団体理事。既存の社会システムに囚われない、共同体とその自治のあり方に関する研究と実践を行なっている。
現在は、長野県小谷村の集落に身を置きながら、自然環境と暮らしの循環を取り戻すための技術習得(茅葺き・樵)に取り組んでいる。 -
株式会社BIOTA 代表取締役 伊藤 光平
慶應義塾大学卒業。高校時代から慶應義塾大学先端生命科学研究所にて特別研究生としてヒト常在菌のゲノム解析に従事。学部生時代には都市の微生物コミュニティのメタゲノム解析に従事。大学卒業後、株式会社BIOTAを創業し、微生物研究を主軸に建築・ランドスケープデザイン、素材開発によって微生物多様性を高める都市デザイン事業を行っている。個人では循環をテーマとしたスペキュラティブデザイン作品を制作・展示している。