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求められるグリーンリカバリー

Date: 2020.08.17 MON

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2020年06月23日 日本総研 橋爪 麻紀子

欧州を中心とした新型コロナウイルス対策関連の経済復興策の議論のなかで、「グリーンリカバリー」という単語が使われ始めている。
これは経済復興策としての公共投資や財政支援において、環境への配慮を重視することを意味する。この背景には、経済復興策には単に雇用維持・創出といった視点だけではなく、環境、生物多様性、食糧、水といった持続可能な社会を形成する要素にも中長期的に影響があるとの認識がある。言い換えれば、グリーンリカバリーを支持する政府・企業・団体は今回の対新型コロナウイルス経済復興策を、気候変動対策を加速させる絶好の機会として捉えているのである。

現在、経済の停滞によって、多くの企業の設備投資や新規事業開発への影響が出ている。このような緊急事態下、グリーンリカバリーが示す環境への配慮、いわゆるESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みや、SDGs達成への貢献といった活動に貴重な経営リソースを割いている場合ではない、という企業の意見もあるかもしれない。
もちろん、目下の運転資金の目途が立たぬ状況ではそれも正しい。しかし、次世代の負債となる大規模な財政出動が行われるからこそ、中長期的な視野で経済・社会・環境への影響や持続可能性という視座を持つことが必要だろう。

今年前半の新型コロナウイルスの感染拡大期では、改めて企業のESGの取り組み姿勢に注目が集まったと言えるのではないだろうか。例えば、多くの企業が社会全体のために、本業の製造ラインを止めて不足する医療器具や衛生用品の製造を行ったのは記憶に新しい。
その他、従業員の雇用維持やリモートワーク導入、顧客の感染防止対策の徹底など、業種に応じた様々な対策が取られた。こうした、地域社会、従業員、顧客といった事業のステークホルダーへの配慮を行う企業が称賛された一方、そうした配慮が十分にできなかった企業がメディアやSNSを通じて批判されてしまうという残念な事例もあった。

今後、緊急事態が解除され多くの国で経済活動が次々に再開されていく。前述した緊急対応の次に企業に求められるアクションは、グリーンリカバリーの考え方が示す持続可能な社会の形成に配慮した事業活動ではないか。

例えば、フランスのミシュランは、この5月にソーラー・インパルス財団などへの支援を含め、新型コロナウイルス収束後に持続可能な「グリーン経済」を再始動させるという方針を公表した。同社CEOは、自社の目標は企業の利益を創出し得る持続可能な成長を達成することであり、それは、従業員、地球とその全住民にとっても有益なものである、とコメントしている。まさに、新型コロナウイルス感染拡大という有事を、自社のサステナビリティ戦略を加速させる機会として捉えていると考えることができる。

そもそも、ESGとSDGsという単語が合わせて語られるようになったのは、「SDGsが包含する社会課題の解決に資する事業に取り組む企業がESG投資の対象として適合しやすい」というロジックによるものだ。

その意味では新型コロナウイルスという地球規模の社会課題に対する企業のレスポンスは、ESG側面の取り組みの一つでもあり、SDGs達成に向けた企業活動の一つであるとも考えられる。大きなダメージをうけた経済、社会の復興のための活動が次世代の持続可能性を脅かすものであってはならない。SDGsが目指す持続可能な社会の実現に向けては、政府にも企業にもこのグリーンリカバリーの視点がより重要になってくることは間違いない。

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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