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2021年の国連総会では何が議論されたのか――気候変動関連に注目

Date: 2021.10.22 FRI

  • #グローバル動向

  • #気候変動

  • #初学者

日本総合研究所 渡辺珠子

2021914日、第76期国連総会が開幕しました。昨年はオンライン会合でしたが、今年は国連本部とオンラインを組み合わせた開催となりました。国連総会という単語は知っていても、何をするのかよく分からないという方がいらっしゃるかもしれません。簡単に言うと、国連総会とは、国連に加盟しているすべての国の代表が集まり、国連憲章の範囲内にある国際的な問題を議論する他、各国が重視する課題を提起し、それに対する取組や立場を表明する一般討論演説を含む一連の会議のことです(*1)。特に一般討論演説は、各国首脳級が集まる外交の場であり、またそれぞれの国の取組を国際社会にアピールすることから高い注目が集まります。今年は21日から6日間に渡って行われました。今回は、一般討論演説の中から、気候変動に注目し、押さえておきたい演説内容を概観します。

国連総会の記者会見で語るグテーレス国連事務総長。2021年9月20日、ニューヨーク/Photo by John Minchillo-Pool/Getty Images/

一般討論演説の初日に演説を行ったグテーレス国連事務総長は「私たちは生きているうちで最大の危機の連鎖に直面しています」と、新型コロナウィルス感染症の大流行、気候変動、アフガニスタンなどの紛争について触れ、「連帯が必要とされている時に限って実現できていない」と厳しいメッセージを発信しました。

気候変動に関しては、パリ協定が定める1.5℃目標を維持する機会が急速に失われており、国際社会が迅速な行動を取る必要があることを訴えました。気候変動の緩和、ファイナンス、適応という3つの主要分野において、どの国もさらに野心的な目標を掲げ実行すべきであり、また各国政府がグリーン経済への転換を図る必要があることを強調しています(*2)。グテーレス国連事務総長は、演説の前日に行われた記者会見で、1031日から英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は「失敗するリスクが高い」と語っています。この演説は、COP26に向けて、各国が脱炭素に関する具体的な目標と実効性のある取り組みが議論されるべきだという強いメッセージとも言えるでしょう。

「連携が実現できていない」と述べたグテーレス国連事務総長に呼応するかのように、アメリカのバイデン大統領は、その一般討論演説の中で、「これからの10年間が共同体としての私たちの将来を決定づける」と述べ、各国と協働する姿勢を強調しています。気候変動に関しては、気候変動に対する野心的な投資が、国内の雇用を創出し、長期的な経済成長を促すとして、グリーンエネルギー経済実現を目指す方針を示しています。また途上国の気候変動対策支援として、2024年までに年間114億ドルに倍増させることを表明しました(*3)。

今年の7月から「CO2排出量取引」を全国的に開始した中国は、2030年までにCO2排出量のピークを迎え、2060年までにカーボンニュートラルを目指すという目標をすでに掲げていますが、一般討論演説でも習国家主席はこの従来の目標達成に向けて努力すると述べています。加えて、途上国の脱炭素を支援すると共に、海外では石炭火力発電所は建設しないことを表明しました(*4)。

英国のジョンソン首相の一般討論演説は、他の国がコロナ対策やコロナ禍からの経済復興、安全保障などにも言及する中、COP26の議長国として終始気候変動に関する課題の提起、英国の取り組み、国際社会に対するさらなる気候変動取り組み強化を訴えるものでした。中国が海外の石炭火力発電所に対する融資支援を取りやめる意思を評価しつつも、中国国内の石炭火力発電所を段階的に廃止することに期待すると述べています(*5)。「英国ができたのだから中国もできるはずだ」と付け加えたあたりに、世界最大のCO2排出国として、従来の目標から踏み込んだ取り組みを示すべきだという意図がくみ取れます。

日本の一般討論演説は、事前に録画したものを会場に流す形で行われました。気候変動に関して2030年度に温室効果ガスを2013年度比46%削減し、さらにこの目標を50%にするべく挑戦を続けると削減量目標強化を検討している姿勢を示しました。COP26直前の10月下旬には、エネルギー基本計画が閣議決定される予定です。日本は「世界の脱炭素化の実現、グリーンで持続的な社会づくりにリーダーシップを発揮する」と述べた(*6)以上、エネルギー基本計画等を踏まえ、どのように脱炭素社会を実現するのか、COP26において技術面、そして政策面での具体的な取り組みを示す必要が高まったと言えるでしょう。

1:外務省 国連総会ウェブサイト、国連総会一般討論ウェブサイト
2:United Nations Secretary-General “Secretary-General’s address to the 76th Session of the UN General Assembly”
3:日本経済新聞2021927日記事、米ホワイトハウス報道資料。
4:United Nations General Assembly E-statement
5:United Nations General Assembly E-statement
6:外務省 国連外交「第76回国連総会における菅総理大臣一般討論演説」

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