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ブルーエコノミーに注目する世界

Date: 2021.10.29 FRI

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日本総合研究所 村上芽

海は、地球の表面積の約70%を占め、約40億年前に地球上に生命体を生み出した起源でもあるとされ、人類の歴史に大きな影響を与え続けてきました。

近年、この「海」と現代の「経済」の関係をよりはっきりと見せ、数字でその力を再認識することをテコに、これからも末永くその恩恵を受けるための行動を促そう、という動きが活発化しています。経済的な価値を評価することを通じて、環境保全の面からも技術開発の面からも「海」の活用を考え直そうということで、ブルーエコノミーや海洋経済と呼ばれています。

動きを牽引するのは、島しょ国や沿岸が長いなど海との関係がもともと深かった国や地域、国連や世界銀行など国際機関です。2018年に立ち上げられた「持続可能な海洋経済の構築のためのハイレベル・パネル」(*1)は、ノルウェーが主導し、パラオ、日本、豪州、カナダ、チリ、フィジー、ガーナ、インドネシア、ジャマイカ、ケニア、メキシコ、ナミビア、ポルトガルの14カ国の首脳により構成されています。

EUのBlue Economy Report 2021

海がある国とない国が混ざっている欧州でも、2018年から毎年、報告書を発表しています。直近の報告書(*2)によれば、ブルーエコノミーという括りで見たときに、雇用450万人、売上高6,500億ユーロ、付加価値1,760億ユーロを生み出しているとのことです。

ここに含まれるのは、生物資源(漁業、水産食品加工)、非生物資源(石油・ガス、その他鉱物資源)、洋上風力、港湾(倉庫、港、水)、造船、海運、沿岸観光に関するビジネスです。これらはブルーエコノミーのなかでも成熟分野と扱われています。筆者は、洋上風力も成熟分野に含まれているという点に驚かされました。

一方、新興(エマージング)分野とされているのが、海洋再生可能エネルギー(浮体式洋上風力、波力・潮力、浮体式太陽光、洋上水素)、ブルーバイオテクノロジー、海水淡水化、海洋ミネラル、海上防衛・監視、研究・教育、海底ケーブル、海中のロボット技術です。中でもブルーバイオテクノロジー、特にプラスチックなどの石油化学製品を代替しうる植物性素材である藻類に注目しています。フランス、スペイン、ポルトガルで1,070万ユーロの売上規模となっているとのことです。欧州委員会では2022年に、この分野をさらに強化するために、「藻類戦略」を採択する予定です。

海洋再生可能エネルギーに含まれる各技術は、2050年カーボンニュートラル達成のために期待されています。いまだ商業化には至っていないものの、2020年時点で全世界12MW中の66%(8MW)の波力発電施設がEUに設置されており、今後の拡大に向けた布石が打たれているように読み取れます。

こうしてブルーエコノミーの分野を追いかけていくと、脱炭素につながるテーマが多岐にわたって海にあることが分かります。再生可能エネルギー発電の分野はもちろん、藻類は、SAF(持続可能な航空燃料)としての可能性も期待されており、日本でも20216月に、藻類由来のSAFをジェット燃料に混合しての実証フライトが行われたところです。

日本では、現時点ではEUのような包括的なブルーエコノミーの評価は行われていませんが、「海」というキーワードには、脱炭素の視点からもこれからますます注目すべきだと考えられます。

*1:(英語)High Level Panel for a Sustainable Ocean Economy
   (日本語)持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル 首脳文書の国内公表イベントにおける菅総理大臣のビデオメッセージ
*2:THE BLUE ECONOMY REPORT2021

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