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Sustainability & the Power of Startups – オープンイノベーションを通じたサステナビリティ課題への取り組みとは –

Date: 2021.11.26 FRI

  • #グローバル動向

  • #イノベーション

2021年7月29日、イベント「Sustainability & the Power of Startups -オープンイノベーションを通じたサステナビリティ課題への取組とは-」を開催しました。主催は、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行と、国内外でスタートアップやオープンイノベーションを促進するPlug and Play Japan。両者はこれまでオープンイノベーションなどの分野で協業をしてきました。サステナビリティという大きな課題に対して、オープンイノベーションが必須であるという共通理解のもとに本イベントを企画。サステナビリティに取り組む国内外での先進事例やスタートアップの現場からのリアルな声と共に「脱炭素に向けたビジネス」のヒントをご紹介します。

  • Opening & Introduction by Plug and Play Japan
  • Partner Session by GREEN×GLOBE Partners
  • Keynote Session
  • Startup Pitch Session
  • Panel Discussion

Plug and Play Japan株式会社 CEO フィリップ・ヴィンセント

Plug and Play(PnP) Japanの長谷川泰斗氏の進行のもと、イベントはスタート。はじめに同社のCEOであるフィリップ・ヴィンセント氏が事業概要を説明。シリコンバレーに本社があるPnPは、世界に30カ所以上の拠点を持ち、ビジネスとして以下の3つの柱を掲げています。

1)グローバル全体で年間60以上のアクセラレータープログラム
2)500社以上の企業パートナーのイノベーション戦略の支援
3)年間200社以上のスタートアップへの投資

その日本拠点として2017年にPnP Japanを創立。これまでに600社以上のスタートアップを支援し、現在は48社の企業パートナーが参画しています。
サステナビリティのプログラムとしては、世界的にプラスチックごみをなくすこと、サーキュラー(サーキュラーエコノミー、水の循環)の2本を課題の柱としています。その3カ月のプログラムを通じ、世界各国でスタートアップを数多くの成立させた実績があります。今後は「日本でもサステナビリティの取組をつくっていきたい。イノベーションを活用し、スタートアップの力を借りて、より明確な結果につなげるよう心がけたいです」とヴィンセント氏は話しました。

Plug and Play Japan株式会社 Partner Success Manager, Mobility Sector 長谷川 泰斗

次に、長谷川氏がPnP Japanから見た「サステナビリティを取り巻く3つの動き」として、①SDGs、ESGをはじめとしたサステナビリティに関する社会的ニーズの増加、②SDGsを起点とした社会課題解決型ビジネスやイノベーション創出の機運の高まり、③ソーシャルグッドを目指したスタートアップ企業の増加、を示します。

②の実例としてアディダスとAllbirdsの企業間コラボレーションによるサステナブルなスニーカーなどを紹介。アディダスのテクノロジーとAllbirdsの低炭素素材を掛け合わせカーボンフットプリントの低い新しい靴を生み出したプロジェクトです。「それぞれが持っている力を掛け合わせて新しいものを生み出すオープンイベーションがサステナビリティなど大きな課題に対して効果的だと考えています。重要なのはコラボレーションが円滑に実行できる基盤となるエコシステム。PnP Japanは企業やスタートアップだけでなく、政府やNGO、NPOなどを含む全体的なエコシステム構築を目指したい」とサステナビリティ課題解決に向けた目標を語りました。

また、③のスタートアップについて「課題を解決しながら急成長していく拡張可能な組織」と定義。「スタートアップは困りごとを解決しながら利益を出し、成長する術を持ち実践している存在」と位置づけます。サステナビリティの課題解決について、長谷川氏は「オープンイノベーションやスタートアップ連携と同様に大事なのは行動に落とし込むこと」とし、その対策として「Small Start」や、60〜70点でよしとして考え動き続ける「Fast Move」、素早く試して小さく失敗し、補正して次につなげる「Try & Error & Correct」という実践的な方法論を披露しました。

三井住友フィナンシャルグループ企画部サステナビリティ推進室長 竹田達哉は、PnPとSMBCグループが2016年から共にオープンイノベーションに挑戦してきた歩みを振り返り、「オープンイノベーションとサステナビリティは今後企業にとって必須の取り組み」と本イベントの企画主旨を語ります。

竹田は、サステナビリティや脱炭素に対して「会社として具体的に何をすればいいか分からない」という相談が急増している状況に対し、SMBCグループが立ち上げた「SMBC Group GREEN Innovator(SMBCグループ グリーンイノベーター)」というサービスブランドについて「サステナビリティの分野でオープンイノベーションを推進していこうということです」と、その主旨を紹介しました。「グループ全体のサステナビリティに関するノウハウ、情報を集約することで他業種との協業を円滑にし、またサービス開発力を強化することで、より高度なソリューションを提供していくことが狙いです」。PnP JapanやGGPのパートナー企業とともに「オープンイノベーション×サステナビリティで新規事業を生み出していきたい」との意向も示しました。

Alliance to End Plastic Waste(AEPW/ 廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス)プロジェクト担当副社長 ニコラス・コレシュ

Keynote Sessionとして、PnPがサステナビリティの分野で協働している国際非営利団体、Alliance to End Plastic Waste(以下、AEPW)のプロジェクト担当で副社長であるニコラス・コレシュ氏が登壇。AEPWはシンガポールに拠点を置き、2019年初頭に27社のグローバル企業により設立してスタート。「プラスチック廃棄物の問題は単独で取り組むにはあまりにも複雑であるため、AEPWで仕事をするうえでコラボレーションが必須です。次の4つの戦略的な柱に沿ってソリューションを開発、展開、拡大しています」とコレシュ氏。

まず一つ目は廃棄物の収集・分別・リサイクルのためのインフラ構築。二つ目はプラスチックの循環経済を可能にする新しいアプローチ、技術、ビジネスモデルを開拓するためのイノベーションの推進。三つ目が、問題に対する人々の理解を深めるための教育と積極的な関与の促進。四つ目が、廃棄物がすでに環境に流出している状況を解決するための清掃活動の支援です。

AEPWとPnPとのパートナーシップによる「プラスチック廃棄物撲滅イノベーションプラットフォーム」は2019年のスタート以来、シリコンバレー、パリ、シンガポール、上海、サンパウロ、ヨハネスブルグでプログラムを実施しています。

現在、世界の60拠点で30以上の廃棄物に関わるプロジェクトのポートフォリオを構築し、これらのプロジェクトが完全に導入されれば、毎年40万トン以上のプラスチック廃棄物の削減が期待されています。

次に、世界各国からサステナブルに取り組むスタートアップの5社が活動を紹介しました。

Persefoni (ペルセフォニ/本社:アメリカ)
共同創業者・CEO ケンタロウ・カワモリ
カーボン会計・管理プラットフォームを提供するSaaS(クラウドサービス)企業。業務上の活動と、投資や融資などの財務活動の両方のデータを取り込み、検証可能な二酸化炭素換算値に変換します。財務諸表と同様の厳密さで、カーボンに関する取引を一覧で収集、管理、計画、報告できるようになることで、変化する各種の規制や基準を迅速かつ柔軟に取り入れた最新のレポートを作成することが可能です。脱炭素に向けた取り組みに役立てることができます。

株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
独自の発酵技術で未利用資源を再生・循環させる社会を構築する研究開発型スタートアップ。バイオマスやフードウェイストなどの未利用資源からアルコールや発酵原料を製造、化粧品原料や化粧品、日用品などのプロダクトにアップサイクルし、ゴミがゴミでなくなる社会を目指しています。製造工程でもゴミを出さず、エネルギーや水をできるだけ使わないようにするなど環境にも配慮し、事業性と社会性を両立するべく事業展開しています。化粧品用原料販売、自社ブランド、OEM、大企業との共創などにより、未利用資源に付加価値をつけていくことを目指しています。

Weturn (ウィーターン/本社:フランス)
ビジネス・ディベロップメント・マネージャー
ミナ・ビショップ
フランス発。できるだけ天然資源の採取を避けるため、売れ残ったテキスタイルを新しい品質の糸にリサイクルする新リサイクルチャネルをつくりました。ロゴや独自プリントが施されてアップサイクルできない生地も含め、製品の選別・回収から加工、糸の再販・再利用を行っています。作った糸をブランドが将来の生産に再利用できるクローズド・ループ・プロジェクト、リサイクル糸をヨーロッパの織物や編み物市場に流通させるオープンループというオプションも提供しています。

Prewave (プリウェイブ/本社:オーストリア)
カスタマーサクセス責任者 ヨナス・アトマイヤー
オーストリア発。高度な機械学習技術を用いてソーシャルメディアのデータを分析し、サプライチェーンにおける今後のリスクイベントを予測するソリューションを開発。毎日、Facebook、YouTube、WeChatなどのソーシャルメディア、ニュースや地方紙、NGOが提供するブログ、USGSといった気象のデータソースをスクリーニングしています。さらに、研究開発に9年以上を費やした人工知能と機械学習アルゴリズムで、文脈や関連性を理解することも可能。50,000以上のグローバルサプライヤーのプロファイルにもアクセスできます。

サステナブル・ラボ株式会社 
代表取締役・CEO 平瀬 錬司
AIを使って非財務価値を数値化するSaaS型プラットフォーム「ESGテラスト」を提供。「ビッグデータによるESG/SDGsの見える化で“良い企業”を照らす」という意味で名付けられた製品です。これまで「強さ(経済性、財務情報)」だけでしか判断できなかった世の中を「優しさ(環境社会貢献度、ESG、SDGsなど)」でも判断するための、新たなモノサシとなります。オープンデータを収集して構造化すること、財務や社会インパクトへの影響度を用いて重みづけのモデルをつくること、機械学習による因果探索ベースの数値化が特徴です。

パネラー:サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役・CEO 平瀬 錬司
     株式会社リコー 環境・エネルギー事業センター脱炭素ソリューション開発室 シニアスペシャリスト 佐久間 洋
モデレーター:インクルージョン・ジャパン株式会社 取締役 寺田 知太

最後は大企業とスタートアップによる新規ビジネスのPoC(コンセプト実証)を経て、共に事業開発を実践中のリコーの環境・エネルギー事業センターでシニアスペシャリストの佐久間洋氏、サステナブル・ラボの平瀬錬司氏によるディスカッションを行いました。モデレーターはベンチャーと大企業をつなぐサービスを行っているインクルージョン・ジャパン(ICJ)取締役の寺田知太氏が務めました。ICJは、ESGアクセラレータプログラムなど、社会・環境面のインパクトと経済的なリターンを両立する事業開発を推進している会社です。

佐久間:リコーは2019年度から同グループと社外のスタートアップを対象とした統合型アクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を行っています。私は「TRIBUS 2020」に社内起業家として応募し、サステナブル・ラボさんにご支援いただきました。テーマは中小企業SDGs推進支援サービス。「テラスト」を有効活用してお得意様のSDGsやESGの診断・見える化を行い、明らかになった強みや改善項目について対案や発信の支援をしました。2021年度は本業のところでサービス化を検証しており、平瀬さんに引き続き支援いただいています。

寺田:リコーは、オープンイノベーションの活動を長く続け、さらにTRIBUS という仕組みで社内外に活動を展開しています。これまでどうやって継続してこられたのかを教えてください。

佐久間:リコーはOAメーカーからデジタルサービスの会社に生まれ変わろうとしています。グループ全体ではエンドユーザーとの接点があるので、お客様のお困りごとをどう解決するか、直接向き合って対応しています。それでもリコーグループだけで解決できないことがあります。そういう場合は、リコーが窓口となってパートナーと解決する姿勢を継続しています。よりよいサービスを提供するためにオープンイノベーションが必要だと思っています。

寺田:スタートアップをたくさん見ていらっしゃる平瀬さん、どうしたらうまく大企業と組めるでしょうか。

平瀬:「アクセラレーターの部署や担当者がどれくらい社内で戦えるのか」が大きいと感じています。お題目やお祭りになってしまうケースってあると思うんです。ビジョンや目標が明確でないケースもあるでしょうけれど、担当者が「やる意義があるからやるんだ!」と社内で戦えるか否かが一番大きいと思っています。そうした意味で、佐久間さんと組めて大変ありがたかったです。

寺田:佐久間さん、今回苦労したのはどのあたりですか。

佐久間:まさに今乗り越えている最中ではあるんですけど(笑)。サステナブル・ラボさんの仕組みが、定量化・見える化できる分かりやすいソリューションだったこと。お客様に持って行って速やかにいい反応を得ることができ、手応えを感じました。それを社内に発信できたのは大きかったですね。仮にこれをリコーで一から十までやったら、1年以上かけてようやくプロットができたのかなと。


寺田:サステナビリティにビジネスとして取り組む場合、どういうところにアプローチしたらよいとお考えでしょうか?

佐久間:私は事業部門に所属していますので、売り上げをつくり出さないといけないと思っています。また、お客様である経営者様や社長様から、社員を大事にすることが会社をよくすることにつながるというお話をよく伺うので、経営企画部門にも興味をもっていただくのがサステナビリティだと確認できました。

平瀬:データ分析のリソースが少ない、取りづらい企業にこそ「ESGテラスト」をご活用頂きたいですね。サステナビリティ領域は標準的なモノサシが少ないので、あらゆる経営判断が難しいと思います。どの格付けを使うのか、そのまま信じるのか、いろんな論争があります。データドリブンに見える化・見せる化することで、意思決定者、あるいは意思決定者に提言する立場の方のお役に立てると思っています。

佐久間:今回、自分でアクションを起こしたことがきっかけでコラボが実現しました。まずは行動を起こすことが第一歩で、それが重要だと思います。サステナビリティへの取組については悩みはつきないと思いますので、何かあればお気軽にお問い合わせください。皆様と一緒に進んでまいりたいと思います。

平瀬:「まずやってみる」ことがすべてなのではないでしょうか。またサステナビリティは、全社横断的な取り組みになりがちで、複数のステージを突破しないといけません。ゲリラ的にでもまずやってみましょう。

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