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家庭系食品ロスの削減へのアプローチ

Date: 2023.03.22 WED

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日本総合研究所 和田美野

国内における食品ロス量は2020年度時点で522万トン[*1]と推計され、それを企業等が排出する事業系275万トン(52.7%)と消費者が排出する家庭系247万トン(47.3%)でおよそ半々ずつ分け合っています。直近で排出量が多かった2015年度と比較すると、事業系が77万トン(21.9%)削減、家庭系44万トン(15.1%)削減と、食品ロスの削減は事業系・家庭系ともに進んでいますが、比較的、家庭系の削減が遅れている状況です。

農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」を元にGGP作成

食品ロス削減量の目標は、2000年度と比較して2030年度に半減することであり、事業系は273万トン、家庭系は216万トンとされています。事業系の目標達成は間近です。他方、食品ロスを削減する目的が、限られた資源の有効活用・効率的分配であるとすると、事業系と家庭系の区分は特に必要なく、総じて食品ロス量の削減を進めていく必要があります。加えて、食品ロスを含む食品廃棄物は、事業系の場合は、多くが再生利用されているのに対し、家庭系は、ほとんどが焼却・埋立処理されている[*2]ことからも、家庭系の食品ロスの削減は、推進していく必要があります。

消費者庁が実施している調査[*3]によると、食品ロス問題の認知度は、2021年度で80.9%(「よく知っている」、「ある程度知っている」と回答した人の合計)です。令和元年度時点で80.2%であることを踏まえると、食品ロスの問題は、おおよそ日本国内で普及・浸透し、これ以上の急激な認知度の伸びは期待できないと言えます。つまりは、問題が認知された上で、現在の削減量に留まっていると考えられます。

家庭系の食品ロスを削減する取組としては、官公庁等が中心となった普及啓発活動が中心です[*4]。家庭系の食品ロス削減をさらに加速させる方策として、消費者が喜んで食品ロス削減に取り組みたくなるようなアプローチを民間企業側が実施していくことも考えられます。また、上述した通り、食品ロス問題の認知度が高い現状においては、「もったいない」等の倫理観に訴えるばかりでなく、食生活の改善や健康の維持など、消費者にインセンティブを感じられるサービスを提供し、そのサービスの利用によって同時に家庭系食品ロスも削減できるようにするといった方法の開発が求められるのではないでしょうか。

一例として、筆者が参画してきたプロジェクトでのアプローチを紹介します。
2021年は、温湿度データを元に青果物の鮮度を可視化し、ネットスーパーにおいて鮮度に応じたダイナミックプライシングによる販売の実証実験を行いました[*5]。「鮮度」を買い物時の新たな指標として提供しました。また、鮮度に応じて価格が変動するダイナミックプライシングを導入し、消費者は自分の食生活や嗜好(「今日食べるから鮮度は低くても安いものを購入したい」、「イチゴはいつでも新鮮なものが食べたい」等)に合わせて食材を選択できるようにしています。このように、ネットスーパーにおける新たな購買体験を提供しつつ、購入した食材を管理できる(在庫管理)アプリケーションも併せて提供し、賞味・消費期限や鮮度を基にした期限の表示や期限が切れそうな食材を使ったレシピをお勧め等をすることで、食材の食べ忘れ等による家庭における食品ロスの削減を目指しました。実証実験に参加した消費者からは、「食品ロスに関する意識が高まった」、「食材を無駄にせずにちゃんと食べ切りたいと思うようになった」といった声が聞かれました。

鮮度に応じて販売価格が変わるネットスーパーのイメージ 出典:日本総合研究所

20222023年には、「健康」を切り口とし、その人の健康度の可視化やクーポン等で健康的な生活を促すサービスと、食材の使い切りを促すレシピ提案を組み合わせたサービスを提供し、同じく家庭における食品ロス削減にアプローチすることができるかを検証しました[*6]
いずれも、家庭系食品ロス削減に民間企業側がサービスの提供を通じてアプローチできるかを試した実証実験であり、社会実装に向けては更なるブラッシュアップが必要ですが、家庭系食品ロス削減に民間企業が取り組むことができる可能性を示すことができたものと考えます。
食はウェルビーイングの実現に欠かせないものです。個人個人の努力だけではなく、新たな買い物体験や健康の実現等のウェルビーイングを実現しつつ、かつ食品ロスの削減につながるサステナブルに貢献するサービスや仕組みが生まれることで、食品ロスのゼロ社会が実現されることを期待します。

*1 農林水産省「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」(2023年1月)
*2
 環境省「食品廃棄物等の利用状況等(令和元年度推計)<概念図>」
*3
 消費者庁「令和3年度消費者の意識に関する調査結果報告書」(2022年4月)
*4
 消費者庁特設サイト「めざせ!食品ロス・ゼロ」
*5
 日本総研ニュースリリース「「鮮度の可視化と個別追跡管理」による食品ロス削減の実証実験について」(2021年1月20日)
*6
 日本総研ニュースリリース「フードチェーン3領域における食品ロス削減の実証実験について」(2022年1月11日)
日本総研ニュースリリース「スマートフォンアプリサービスによる食生活改善と食品ロス削減の実証実験について」(2023年1月17日)
日本総研ニュースリリース「健康状態の可視化やインセンティブ提供、食材使い切りレシピ提案による健康的な活動の促進と食品ロス削減の実証実験について」(2023年2月1日)

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