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現代の社会潮流をもとに未来の事業を洞察する ——SUSTAINABILITY FUTURE MAP 2035の作成

Date: 2023.05.09 TUE

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サステナブルな社会の実現に向け、従来の積み上げでなく、将来的にどのような未来を実現したいかを描き、バックキャストで事業を考えることが必要です。GGPを運営する株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)サステナビリティ企画部は、GGPの連携パートナーである株式会社ロフトワークと共に、2035年をターゲットとした未来マップ「SUSTAINABILITY FUTURE MAP 2035」を作成しました。この記事では、社会や環境の変化を読み解くデザイン思考[*1]に基づくワークショップ手法や、「SUSTAINABILITY FUTURE MAP 2035」の内容をご紹介します。

ワークショップ(WS)に先んじて、公開情報からトレンドのリサーチを実施しました。参加者それぞれが、サステナビリティの視点から2035年までに起こりそうな社会的変化の傾向を各種メディアなどからピックアップ。「宇宙ビジネス100兆円の可能性」「空飛ぶクルマで世界初の通勤達成!」「新興国、人工降雨で気象制御」「フンコロガシが土壌汚染を救う」「アメリカで銀行口座を持たない若者が急増中」など、国内外のニュース記事や書籍などから157項目の“未来の兆し”が俎上に上がりました。

これらの話題を環境、社会、経済など分野別に整理し、ここから2035年までのヴィジョンを描くWSの始まりです。時代の読み解き機会領域の抽出ヴィジョンの明示という3段階でWSを実施しました。

図提供:ロフトワーク

1回目は、157項目が一覧となったシートを項目毎に短冊状に切り分け、似ている項目をまとめるKJ法を用いたワークです。KJ法とは、1960年代に文化人類学者の川喜田二郎氏が膨大なデータをまとめる際に編み出した方法で、現代でもブレインストーミングや合意形成に用いられる発想整理術です。157の未来の兆しを出発点に時代を読み解き、2035年の社会像を構想するWSが始まりました。

「いろいろな人の視点を交えて考えるプロセスが面白い。さまざまな方向にヴィジョンを展開できる可能性を感じた」、「自分だけでは気づかない意見に触れることができる」と参加者。協働しながら新たな視座を見つけていきます。

2回目のWSでは、前回157から73項目に集約した小グループをさらに中グループ化、大グループ化するワークです。参加者がソロワークでグループ化を行い、その意図を発表して全員で意見を交わしながらだんだんと思考を収斂させていきました。

157項目の“未来の兆し”から、小グループ73、中グループ32、大グループ23、そして最終的には以下のA-Eを頭文字とする5つの社会変化の方向を見出しました。

5つの社会変化の方向]
Ability 求められる能力の変化
Bargain 取引における変化
Community コミュニティの変化
Data データ活用における変化 
Environment 環境における変化

3回目のWSでは、いよいよ機会領域の抽出です。ワーク1KJ法を通じて得られた洞察(insights)に対して、「どうすればよいか」を考え、機会領域を構想していきます。ファシリテーターを務めるロフトワークの棚橋弘季氏によると「どのようなアクションをしたらよいかのアイデアスケッチをする段階。具体的な解決策を描く手前で解決の方向性を見いだすワーク」です。新しい事業機会を創出する領域を仮説的に描きます。

5つの社会変化が起こる前提で、どのような人が、どのような価値提供や課題解決を必要とするかを想定し、以下のような事業機会を構想しました。

オンライン学習や生涯学習、リスキリングなど教育を受ける機会が増加し、人の創造性を育むツールや、教育プログラムに関わる事業が求められる。

多様化する消費者の個別ニーズによりフィットした商品開発が求められる。
価格設定の仕組みやその可視化が求められるようになる。
共同所有など新しい経済のモデルに根ざしたサービスが生まれる。

独自性があり魅力的な地域運営のためのビジネスや人材登用が行われる。
経済のグリーン化に伴い、新たな地域経済をつくるための施策や取り組みが必要となる。

行政サービスなどのDXが進む中、データを活用したシステムベンダーなどデータ活用に関連した事業/サービスの増加・活性化が進む。
個人情報などの莫大なデータを安全に管理するための保守点検、データ管理・保管のルールやサービスが求められる。

サーキュラーエコノミーの実現に向けて、生産や資源収集の仕組みづくりが進む。
気候制御のためのアルゴリズム開発や関連ビジネスが生まれる。
温室効果ガス排出量が低い事業の買収や投資が増加し、企業の事業や業態を転換するための支援が必要となる。
環境に配慮したグリーンビルディング、地産地消の流通などの社会インフラ整備が行われる。

そして最後の4回目では、実際のサービスを検討するWSを行いました。バリュープロポジションキャンパスというツールを用いて、新たなサービスを考案するワークです。

図提供:ロフトワーク

参加者は2つのグループに分かれて議論を深めました。ひとつは、ビジネス環境が大きく変化していくという仮説のもと、職業や企業の業態変化に則した金融機関としての新規サービスを考案しました。もうひとつは、自律分散型の都市構造を想定し、魅力的な自治体づくりのためには何が必要かについて、さまざまなアイデアを出し合いました。

現時点の社会的な潮流や課題をもとに2035年の未来社会を洞察し、金融機関としての新たな事業やサービスを考え、実践への可能性を高めるWSとなりました。「サステナブルな社会の実現には、これまでの延長ではないビジネスモデルを考える必要があります。今回のWSを通じて、2035年という少し先の未来の視点や、社内外の多様な年代のメンバーの考えを取り入れることができました」と、参加者は語ります。


*1 デザイン思考:デザイナーがデザインを行う過程で用いる思考法から発展したもの。ビジネスやイノベーションなどあらゆる複雑な問題に適用できるプロセスとして注目されている。

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