GREEN×GLOBE Partners

ARTICLES

サステナビリティについて知る

DX・GX実践者とともに考える地方創生——地域DXプロデューサー制度も話題に

Date: 2024.01.22 MON

  • #ソーシャル

  • #地域共創

  • #イノベーション

20231110日、GGPは一般社団法人SDGs Innovation HUBと共催で「まちをつくる人と場のつくりかた 〜地域からはじまるDXGX推進のセオリーを考えるワークショップ〜」を開催しました。
イベントでは、すでに地域でDXGXを実践し注目されている方々をゲストに招き、具体的な施策や取り組みをプレゼンテーション。その後、参加者約30名が4つのグループに分かれ、ゲストが掲げた以下の4テーマについてワークショップ(WS)形式で議論を深めました。テーマ1と2WSでは「リーダー育成」、テーマ34WSでは「共創が起こる場づくり」のセオリーを探ります。

(上段左から)山形県西川町 菅野大志町長/一般社団法人OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーションの田中靖訓代表理事/北九州市産業経済局次世代産業推進課の大庭繁樹課長/大日本印刷モビリティ事業部新事業開発部の椎名隆之部長 (下段左から)川﨑建設の川崎龍也代表取締役/ジャパニーズビューティの勝さやか代表取締役/陶芸家の森敏彰氏/SDGs Innovation HUB設立理事(アドバイザリー)の御友重希氏

このテーマについて、自治体首長として実際に行っている施策を語ったのは、山形県西川町の菅野大志町長です。菅野町長は地方創生に対し「これからはアイデア勝負の競争時代」との位置づけ、20224月の着任以降、デジタル技術を活用した地域経営に乗り出しています。

例えば、大きな話題となった日本初の「西川町デジタル住民票NFT」。これは同町のデジタル住民になれるNFT(非代替性トークン)で、今春1000個を発売したところ、人口約5000人の町で、13440の購入需要がありました。

観光コンテンツ「月山カヌービレジ」や、AI謎解きゲームを構想し、デジタル田園都市構想(デジ田)等の補助金を活用し、町の関係人口を増させることを目指しています。さらには、高齢者の移動補助や健康増進のためのアプリ制作など、同補助金を地域住民の生活支援にも役立て地域価値を高めています。

「デジタル化を地域で推進していくためには、町民の熱量が必要」と菅野町長。町民の意識を高めるための対話を重要し、リアルな場に加え、1500人が登録するLINEを使ってコミュニケーションを深めています。

観光客と移住者の間=関係人口=西川町のファンの獲得に向けて  資料提供:西川町

西川町のターゲット(若者・富裕者層)を関係人口に取り込む策 資料提供:西川町

そうした菅野町長の実践を受け、ワークショップでは「若きリーダー育成」をテーマに議論。地域の課題を編集する「地域コミュニケーター」の必要性、そしてそれらの人々が連携できる仕組みづくり、社会的に評価される認定制度の可能性などが語られました。

2つめのテーマは、大阪や北九州といった大都市の取り組みを元に議論を交わしました。

テーマオーナーは、産官学連携を推進し、新たな産業創出の支援を行う2人です。

1人は一般社団法人OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション(OZCaF)代表理事の田中靖訓社長です。リマテックホールディングスの代表取締役として、国内で資源循環型のインフラを構築する傍ら、産官学連携で脱炭素を目指すためのプラットフォームOZCaFを2021年に設立しました。現在は大阪府の企業や基礎自治体、経産省や環境省、大学など2300以上の団体が参加。2025年の大阪・関西万博も視野に入れ、環境先進都市としての大阪を目指しています。

田中氏は「エネルギー消費が多く、創エネのための場所が少ない都市部では、都市のエネルギー効率を上げCO2削減が必要。デジタル技術を用いて脱炭素を実現できる人材育成を目指している」とOZCaFの活動を説明しました。

もう1人は北九州市産業経済局次世代産業推進課でDX・GXを担当する大庭繁樹課長です。

同市は成長戦略として地域産業の競争力を高めるためのDX・GXに力点をおき、企業同士のマッチングを行ったり、表彰を行ったりしています。

「DXとは現在の経営力を高めるための支援、GXとは将来にわたり延びていく産業への転換を促す支援」と大庭氏は地域産業育成の方向性を語りました。

北九州市のDX推進支援 資料提供:北九州市

北九州市のGX推進支援 資料提供:北九州市

テーマ2のWSでは、DX・GXについての知見を楽しく学び交流の場の必要性に共感が集まりました。

また、地域課題を構造化すること、それを解決するために多主体でヴィジョンを描くプロジェクトを今後行うなど、具体的な行動の可能性が議論されました。

VISON(ヴィソン)とは、デジ田交付金を受けた三重広域連携モデル事業として運営されている複合リゾート施設です。三重県の中南部の5つの自治体(多気町・大台町・明和町・度会町・紀北町)が連携し、仮想自治体・美村(びそん)をブランド化し、住民や観光客にとって魅力的な地域づくりを進めています。その核となる施設がVISONなのです。

このテーマオーナーは、美村立ち上げの中心人物である大日本印刷の椎名隆之モビリティ事業部新事業開発部部長です。

椎名氏はまず、「人口減少時代は供給先行ではなく、先行需要情報やデータが中心となる」とDXの必要性を示しました。しかし、その活動の目的はデジタル化ではなく、人口減少を抑える魅力的な地域づくりであることを強調しました。

デジタル技術を用いて実践しているので、住民参加で行う地域情報発信のポータルサイト、広域観光のポータルサイトなどのコミュニケーションの促進、地域通貨の発行などです。「システム納品に終始しない、裏側の活動が重要」と椎名氏は語り、サテライトオフィスやデジタル体験できる「キッズメタバースワークショップ」などの運営について語りました。

三重広域連携モデルでのデータ利活用事例。住民や観光客の決済動向や地域のイベント情報などにより、傾向データを取得し活用している 資料提供:椎名隆之

発展的段階で整理した三重広域連携モデル 資料提供:椎名隆之

ワークショップでは、食やサウナなどVISONのコンテンツの多さを共有することから始まり、ローカルハブの可能性を議論。その結果、空家を活用してアーティストや農業専門家を招聘するイン・レジデンス、セカンドハウスなどのアイデアが出されました。また、快適にエリア内を移動するためのライド・シェアなど新たなモビリティにも話が及びました。

コロナ禍で人が集まれなくなったのを契機に川﨑建設が2022年に開催した「岡山メタバース」。岡山県の産業や観光、文化、食などをメタバース空間の中で世界にPRする仮想空間博覧会です。県内の50を越える企業や行政が出展しました。メタバース構築の中心人物が川﨑建設代表取締役の川崎龍也氏で、SDGs Innovation HUBが認定を行う地域DXプロデューサー★★2023の1人です。

川崎氏がつくったメタバース空間はその後、さまざまな展開を繰り広げています。ひとつは、伝統工芸である備前焼の紹介です。3Dで窯をスキャンしてメタバース空間内に構築したり、コロナで社会科見学ができなくなった小学生がVRで窯元体験できる授業を行ったり、活用方法が広がっています。

また、2023年には「ミスなでしこ広島大会」など、初のメタバース内でのミスコンにつながりました。ミスコンを運営するジャパニーズビューティ代表取締役の勝さやか氏によると、観客動員数がリアル開催よりも増加する効果もあったと言います。

Okayama Metaverse EXPO 2022 資料提供:川崎龍也

メタバース導入例。備前焼編 資料提供:川崎龍也

ワークショップでは、川崎氏、勝氏、そして備前焼窯元六姓の伝統を継ぐ陶芸家の森敏彰氏をテーマオーナーとして、メタバースをはじめとしたWeb3技術と地域の魅力発信について議論を交わしました。まだ一般には浸透していなメタバースを身近なものにしていくためには、メタバースアンバサダーなどの人材育成、専門資格、協会など窓口機能などの必要性が語られました。また、実空間の中で専門家と出会えるようなイベント開催など、リアルと仮想空間を組み合わせたイベントや場づくりについても言及されました。

この企画は、共催のSDGs Innovation HUB設立理事(アドバイザリー)の御友重希氏の発案と協力いただいた登壇者・関係者の共感と熱意から始まりました。テーマ設定は、先進的なDXGXが行われている地域には「リーダーとなる人材がいる」「さまざまなステークホルダーが協働できる場がある」という仮説を元に設定しています。

SDGs Innovation HUBでは、姉妹団体である一般社団法人デジタル田園都市国家構想(デジ田)応援団と共に、デジ田を推進する人材育成プログラムの1つとして地域DXプロデューサーの認定事業を行っています。また、国際ビジネスコンテストや地域DXプロデューサーが出会う研修など、多様な場づくりも展開中です。

御友氏は「オンラインでも、リアルでも、メタバース空間内でも、デジ田に実現に向けたローカルのHUBを志ある皆様と共創する場を増やしていきたい」と述べ、イベントを締めくくりました。

(文:有岡三恵/Studio SETO)

  • TOPに戻る

関連記事

NEWS LETTER

GGPの最新情報をお届けするNews Letterです。
News Letterの登録は以下からお願いいたします。
(三井住友フィナンシャルグループのサイトに遷移します。)