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循環型モジュール家具で伝統産業を世界に伝える——Tesera(三谷産業グループ)

Date: 2024.07.02 TUE

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左から代表取締役社長の内田武彦氏、セールスデザイン課の清田菜月氏、テクニカルデザイン課長の土屋太蔵氏

GGP Edge Programとは

GGP Edge Program(以下Edge Program)は、本業を通じて社会的価値を創出する企業や事業を支援することを目的としたサービスです。SMBCグループが2023年度から開始し、初回の支援先として公募で選ばれたのはフーディソン、Tesera(三谷産業グループ)、三和物産の3社でした。
2024年1月〜3月にかけて日本総合研究所(以下、日本総研)の有識者によるメンタリングを5回、選考委員を務めた京都大学教授の山田仁一郎氏によるメンタリングを2回行いました。
Edge Programに参加した各社の皆さまにプログラムの手応えを伺い、3回シリーズでレポートします。
2024年度は7月より、公募を開始する予定です。

Tesera(石川県金沢市)は、モジュール家具Tesera®の開発・製造・販売を行っています。石川県金沢市に本社を置く三谷産業のグループ会社の1つで、2022年に会社を設立しました。Tesera®のコンセプトは、用途に合わせて自在に変化できる「フレキシビリティ」、持続的に使用できる「サスティナビリティ」、様々な空間に調和できる「ミニマルデザイン」です。規格化されたアルミ製のフレームと面材で構成するシェルフやデスク、ローボードといった家具は材の組み合わせで様々なかたちに変えることができます。また、組み立てや部材交換が可能で、半永続的に使えるのが特徴です。
Edge Programでは、日本総研の長谷直子氏がメンターとなり、Teseraがもつ可能性をロジックモデルの作成を通じて言語化していきました。プログラムに参加した代表取締役社長の内田武彦氏、テクニカルデザイン課長の土屋太蔵氏、セールスデザイン課の清田菜月氏にお話を伺いました。

——Edge Programでは、Teseraの社会的な意義を掘り下げるロジックモデルを作成しました。最初に、Tesera®を開発した経緯を教えてください。

内田武彦 Tesera®(テセラ)は、三谷産業グループの住宅設備機器部門、株式会社INTENZA(東京都千代田区/現在は株式会社インフィルに吸収合併)在籍時に構想したものです。三谷産業は石炭の卸売からはじまった会社で、今では6つのセグメントで事業を展開しています。INTENZA在籍時の2015年頃から、私のアイデアを基に従来とは異なる価値をもったオリジナル家具を開発するプロジェクトが立ち上がりました。私たちは当時抱えていた課題を整理し、今後の目指す姿を議論するうちに、フレキシビリティやサステナビリティ、ミニマルデザインといった商品のコンセプトが見えてきました。
それで可変性や持続性のあるマルチ・フレーム・システムの家具を開発し、2019年にTesera®を発表。2022年には株式会社Teseraとして分社化したという流れです。

Tesera®の商品一例 写真提供:Tesera

——Teseraは着脱可能でリサイクルできるのが特徴です。なぜそのアイデアが生まれたのでしょうか。

内田 当時私はINTENZAのデザイナーとして、集合住宅に使われる収納システムの開発に携わっていました。その製品は生産効率が高く、コストパフォーマンスもよいものでした。一方で、不動産開発の論理の中で、集合住宅の内装はスクラップ・アンド・ビルドされてしまうことに疑問を感じていました。戦後の日本では、住宅や家具をつくって壊すという文化が根付いてしまっていますから。でも、まだ使える家具を捨ててしまうのはもったいないですよね。それらを大事に長く使ってもらいたいという思いを抱いていました。
開発者として、つくる側の責任として、組み立てが簡単で、ライフスタイルに合わせてかたちを変えながら、使い続けてもらえるものをつくりたいと思っていました。それで、部材をモジュール化して、取り替えられるようにすればよいのではないかという発想が生まれました

——Tesera®のフレームは細いアルミ製で、接合部のネジが表面からは見えない繊細な納まりに驚きました。この構成はどのように生まれたのでしょうか。

内田 アルミは自由なかたちをつくることができる特性があります。押し出し成形という加工技術では、金型をつくれば独自の造形ができるので、家具のデザインに適していま。また、リサイクル率も高い素材なので、持続可能性にも寄与します。フレームは20mm角と細いですが、安全な構造となるように強度を確保しています。接合部は、フレームの内側にあるネジを締め付けて張力を加えることで強度がでるように特許を取得しました。
サイズは、例えばシェルフならば、奥行きは450mm、幅は450675900mm、高さは175250350mmまでのモジュールを自由に組み合わせることができるようにしています。

  • Tesera®の接合部 写真提供:Tesera

——三谷産業グループとしてEdge ProgramTesera社の事業を応募したきっかけを教えてください。

内田武彦氏

内田 Tesera®の開発当初から、三谷産業では製品の持続可能性がビジネスを生むと考えていました。でも、コスト優先のスクラップ・アンド・ビルドが主流の建築・家具業界の中で、持続性に付加価値を感じてくれる依頼主が本当にいるのかという不安も抱えていました。
持続性をもった家具が、利用者にとっての価値になり、そのためにお金を払って購入していただけるのか——。持続可能性や社会貢献とビジネスが両立することをきちんと整理し、理解する機会が必要だと思ってEdge Programに応募しました。
当社からは、開発担当として土屋さん、営業担当清田さんにこのプログラムに参加してもらいました。

——ロジックモデル作成を通して、意識の変化や気づきはあったでしょうか。

清田菜月氏

清田菜月 日本総研の長谷氏によるメンタリングでは、付箋を使ってアイデアを書き出していくワークショップを行いました。その中で、Tesera®を利用いただくステークホルダーのメリットや社会的価値は何かと問われ、応募時点では想定していなかったステークホルダーが見えてきました。

土屋太蔵 私もステークホルダーの多さを改めて感じました。Tesera®をつくることによって、最終的にどこに、だれに影響するのか、いままで以上に可能性を感じるようになりました。
また、開発担当者として、ロジックモデルを意識していましたが、感覚的に捉えていたことに気づきました。プログラムを経て、具体的に言語化し、目標やアウトカムを考える習慣がつきました。
会社設立から日が浅いこともあり、社外の人から意見を聞く機会が少なかったので、ワークショップで長谷氏やGGP事務局の方々から意外な発想をいただき、「あ、そんな考えもあったんだ!」と。

日本総研によるメンタリングを行った前後のステークホルダーマップの比較。左がメンタリング前、右がメンタリング後

清田 三谷産業の本拠地がある金沢には、繊細な町屋の格子(木虫籠・きむすこ)をつくる伝統産業があり、この技術を使ったTesera®のパネルがあります。Tesera®で金沢の木虫籠や金箔を使うことは、日本の地域産業の再成長にもつながるという意見をいただき、私たちの想いへの自信を得ると共に、改めて金沢の伝統文化からインスピレーションを受けて考案されたTeseraの価値を感じました。

木虫籠を使ったTesera®のシェルフ 写真提供:Tesera

土屋 また、解決すべき社会課題からバックキャストで考える思考方法はこれまで経験がなかったので、私自身の頭の体操になりました。
先ほども言ったように、ステークホルダーやアウトカムに対する思考の解像度が上がっていたので、第3回目までのロジックモデルと比べて、より詳しいロジックモデルが作成できたと思います。

第3回目までのメンタリングを通じて作成したロジックモデルの1例 図:日本総研の資料を基にGGP作成

——京都大学教授の山田仁一郎氏によるメンタリングはどのような内容だったのでしょうか。

土屋太蔵氏

土屋 Teseraの循環型ビジネスに興味を持っていただき、日本国内だけではなく、グローバルな視点でのアドバイスをいただいたのが印象的でした。

清田 Teseraの名前の由来は4次元超立方体の「Tesseract」です。山田氏から「普通ではなく新しいものを生み出したいという背景を示すシンボルはありますか」という質問をいただいた際にこのお話ができませんでした。機会があればこのTessractについてもう少し深くお話できたらと思っています。

内田 Tesseractとは幾何学用語で、なかなかこれを理解するのは難しい(笑)。
正方形は一次元ですが、それを組み合わせていくと三次元の立方体(正六面体)になります。さらにその立方体を4次元空間の中で、正方形から立方体をつくる時と同じような考え方で8個の立方体を組み合わせてできるのが正八胞体、つまりTesseractです。
Teseraの背景には理数的、幾何学的な考え方があるということですね。同時に、既成の枠を超え、自由自在な組み合わせで、新しい空間の価値を創造するという意味を込めたものです。

——プログラム全体を通してのご感想や今後のEdge Programへのご意見があれば教えてください。

土屋 プログラムを通じて、Teseraがもたらす最終的なインパクトを学ぶことができました。これまで1歩しか踏み込めていなかったことも23歩踏んで考える癖がついたと思います。部下にもこの思考方法を求めるようになりました。
Edge Program
自体のインパクトを、Teseraで具体的に示し、様々なステークホルダーと繋がっていきたいです。

清田 私は、これまで以上にTeseraにはいろいろな可能性があることに気づきました。
大量生産、大量消費への課題はもちろん、今後、同じ課題を抱える企業と連携し、日本のモッタイナイ精神を世界に広げる普及活動にも繋げていけたらいいなと思います。

内田 これまでは総合建設会社をターゲットにしていましたが、建築主により近い視点で、価値を認めてもらえるものをつくっていきたいと思っています。
ビジネスと持続可能性、社会的な責任と社会貢献の両軸を深く議論できたことが、私たちにとっては非常に有意義でした。ビジネスとして社会的な価値を生むということが社会に浸透していけば、Edge Programのインパクトに繋がっていくと思いました。

2024410日 Tesera本社にて 聞き手:GGP事務局 文:有岡三恵/Studio SETO 特記なき写真:村田和聡)

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