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おひとりさま高齢者急増——安心できるつながり必須に

Date: 2024.09.02 MON

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日本総合研究所 沢村香苗

社会保障・人口問題研究所が5年ごとに行う「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」の結果が、20244月に発表されました。
これは2020年の国勢調査を基に、2020年から2050年までの世帯の状況を推計したものです。
世帯の単独化が進み、平均世帯人員は2020年の2.21人から2033年には2人を割り込んで1.99人になり、2050年には1.92人になる見通しです。単独世帯は2050年には全体の44.3%を占めます。世帯主が65歳以上の単独世帯は2020年の7378千世帯から大きく増え、2050年には1,0839千世帯となります。

出所:国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2024年推計)より筆者作成

世帯の単独化が進むことはこれまでの推計でも示されていましたが、今回特に関心を引いたのは、単独世帯のうち未婚者が占める割合が大きく増え、2050年には男性で59.7%、女性で30.2%が未婚者であるという点でした。
現在は、一人暮らしの方がすなわち「身寄りがない」とは限らず、配偶者と死別や離別したなどで単独世帯となったものの、近くに子が住んでいて手助けしてくれるような場合も多くあります。ただし今後は、若い世代の血縁者を持たない「身寄りがない」高齢者が増えることになります。

出所:国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(2024年推計)より筆者作成

身近に手助けをしてくれる人のいない高齢者の課題はすでに顕在化しつつあります。
20241月〜3月に、一人暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者は約1万7千人であると警察庁が公表しました。単純計算で年間約68千人が独居状態で死亡していると推計できます。

孤独死・孤立死については定義が統一されておらず、これから国の実態把握調査が行われる予定ですが、独居の方が自宅で死亡するとその後の手続きが簡単ではないことが多くあります。死亡届を出して火葬する親族がいなければ自治体が火葬の手続きをしますが、親族の有無を確認することに大変な手間がかかっています。また、残置物や空き家の適切な処分にも時間がかかり、貸主や近隣の住民に損害を与えてしまいます。あるいは、銀行口座にお金が残ったまま、休眠預金となることもあります。

死後の手続きを自分で行うことは不可能ですので問題が顕在化しやすいのですが、実際は、高齢期に起こるさまざまな出来事に一人で対処できないという問題があります。
たとえば認知機能や身体機能が不十分になって、ごみ捨てや食事の用意が自分ではできないときに、ヘルパーの利用契約を結んだり、介護保険制度の利用を申請したりするなどの手続きをすることは、身近に手助けをする人がいなければ困難でしょう。

よく「おひとりさま」「身寄りのない高齢者」という言葉が使われますが、この問題を抱えるのは一人暮らしの方に限りません。
高齢者のみの世帯や、何らかの理由で自立が難しい子と高齢者の同居世帯など、お互いに支え合ってなんとか生活しているような場合は、一人が体調を崩すと、全員の生活が成り立たなくなることもあるからです。

また、子がいたとしても、子育てや仕事で忙しかったり、経済的な余裕がなかったり、遠くに住んでいるなどして、高齢者を支える余力がないこともあります。つまり、私たちは老後におこるさまざまな出来事に自分で対処することを前提として、自分たちの生活や世の中の仕組みを考え直す必要に迫られているといえます。

日本総合研究所が50歳から84歳の一般住民に行った調査では、9割の人が病気や要介護状態や死亡時に備えておきたいと思っているが、もう少し先でいい、するべきことが多い、何をしていいかわからないなどの理由で先送りしていることが分かりました。逆にいえば、いつ、何をするかを整理することによって、前もって備える人は大きく増えると期待できます。

横須賀市・稲城市の住民2,512人(50〜84歳)に対するアンケート調査  人口減少・単身化社会における生活の質(QOL)と死の質(QODD)の担保に関する調査研究事業(日本総合研究所、2023年3月

老後に限らず、人生におけるさまざまな出来事に対処するときには、誰かの助けを借りなければなりません。
これまで家族という、多くの人が生まれたときから持っているつながりで支え合ってきたのですが、これからは自らの意思でつながりを生みだし、維持することが必須になります。

実際に、新たなかたちでのつながりを作り出し、支え合って生きていこうとする試みが生まれています。たとえばグループリビングという複数人の仲間と暮らす形態があります。「NPO法人COCO湘南」では、地域のサービスを利用して、住み慣れた地域で最期まで自立して生活を送ることを目指しています

また、SNSを活用して悩みを相談し合う機会や、法律や医療等の専門家への相談機会を作る活動を行うおひとりさま(女性)の自主団体「一般社団法人おひとりさまネットワークSISTERHOOD」もできています。

自分の意思だけで家族を作ることはできませんが、つながりを作り出して維持することはできます。
自由なライフスタイルを謳歌する「個」が、支えること・支えられることのできない「孤」とならないように、また「個」がより充実するように、主体的に考え、動くことが求められる時代といえるでしょう。
自治体や企業には、そうした機会を作り出したり、取り組みへの報酬を設定するなど、個人の動きを支える役割が期待されます。

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