2021.06.11 fri

TCFDとは何か?(前編)企業に迫る気候変動対策の波

世界のTCFD賛同国、機関の状況 出典:https://www.fsb-tcfd.org/

日本総合研究所 渡辺珠子

気候変動対策の一つとして、TCFDという単語を新聞などで目にすることが増えています。2021年6月頭に開催されたG7財務相会合でも「民間資金を気候変動の目標達成に向かわせるべき」との発言があり、TCFDの提言に沿った情報開示の重要性が改めて指摘されました。TCFDとは何のことでしょう? どのような対応が必要になるのでしょうか?

「脱炭素社会移行による事業への影響(第1回)」で、TCFDについても用語解説していますが、改めて内容を見てみましょう。TCFDとは、気候関連財務情報タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の略称です。G20財務大臣・中央銀行総裁会議からの課題提起を背景に、201512月に金融安定理事会が設立しました。気候変動対策を誤ると金融市場の安定に悪影響を及ぼすという考えのもと、TCFDは投資家・金融機関にリスク認識と対策を促し、同時に企業に情報開示強化を求めています。これは温室効果ガス排出量の開示のみを行えばよいのではなく、気候変動が財務にもたらす影響について、ガバナンス(経営の意思決定)・戦略・リスク管理・指標や目標を明示することが推奨されています。

日本では経済産業省が2018年にガイダンスを発表し、TCFDコンソーシアムが設立されました。2021528日現在までに、世界全体では2158の企業・金融機関がTCFDに賛同する意思を示しており、日本では401の企業・金融機関が賛同の意思を示しています(*1)。コロナ禍からの景気回復策の一つとして、世界各国で脱炭素対策が打ち出される中、TCFDに賛同する企業はさらに増加傾向にあります。

図:TCFDコンソーシアム作成資料をもとにGGP作成

英国をはじめいくつかの国では、すでにTCFD提言による情報開示を制度化することを打ち出していますが、202111月に開催予定のCOP26(国連気候変動枠組条約の第26回締約国会議)でもTCFDの義務化が主要論点となっています。日本でも2021331日に公表されたコーポレートガバナンス・コードの改訂案において、東京証券取引所の新市場区分となる プライム市場上場企業に対して、気候変動についてはTCFDまたはそれと同等の仕組みに基づく開示要請が示されています。

TCFDでは気候変動が財務にもたらす影響について、①ガバナンス(経営の意思決定)②戦略③リスク管理④指標と目標について情報を開示することを推奨しています。それぞれどのような内容が求められているかをみてみましょう。

①ガバナンス
気候変動関連のリスクと機会をどのような体制で検討し、どのように企業経営に反映しているかについての情報開示が求められています。例えば、取締役会の議題に気候変動を取り上げる、社内に専門委員会を設置して議論するなどの体制や経営の反映方法を記載することが求められます。

②戦略
短期・中期・長期にわたり、気候変動関連のリスクと機会がもたらす事業や財務計画への顕在的・潜在的影響を示すことが求められています。自社のマテリアリティを特定した上で気候関連のリスクと機会を示す、シナリオ分析の内容及び結果を踏まえて示すなどの方法があります。

③リスク管理
気候変動関連のリスクをどのように特定・評価し、それらのリスクをどのように管理するかについて、具体的な方法を示すことが求められます。マテリアリティに基づくリスク評価やリスク要因の定期的なモニタリングなどを示すといった方法があります。

④指標と目標
気候変動リスクと機会を評価する指標や設定した目標、目標に向けた進捗管理などを示すことが求められています。自社を含むサプライチェーンにおける温暖化ガス排出量や水資源の使用量などの環境関連の指標の他、金融機関などではグリーンボンドの引受額などを示すといった方法が取られています。

②~④の項目では、自社だけでなくサプライチェーン上に現れる取引先企業の情報を含めることが多くなっています。つまり企業規模に関わらず、TCFDに対応している企業と取引している企業においても、気候変動関連の情報開示が求められる可能性が高いのです。

次回は事例を用いながら、実際にどのように情報を開示しているかをみていきます。

1:TCFDコンソーシアム

  • TOPに戻る