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「守るべき自然とは何かを実感する」 ——GGP富良野合宿レポート

Date: 2022.04.11 MON

  • #初学者

  • #地域共創

  • #自然資本

「気候変動を止めよう」「環境破壊を止めよう」と言いながら、わたしたちは本当に守る対象がどんなものかわかっているのでしょうか?守る対象が分からないからこそ、環境を守るために何から取り組めばよいのかがわからないのかもしれません。

まずは、守るべき対象である自然を実感してみる。
そこに住む人と対話をし、自分たちが解決すべき課題を考えてみる。
そうして初めて、自分たちが何を解決したいのかが見えてくるはず。ーー

この仮説をもとにGGP事務局は連携パートナーである富良野自然塾とともに、2021年11月に富良野での合宿を開催しました。本記事では、GGP事務局の視点からこの合宿を経て何を感じたかをお伝えします。冬に差し掛かり自然の厳しさを垣間見せる11月の富良野の様子とともにお届けします。

実施日:2021年11月17日〜11月19日

場所:富良野自然塾

DAY1

・オリエンテーション
・目隠しをして森を歩くプログラム
・石の地球
・46億年「地球の道」プログラム

DAY2

・望岳台
・青い池
・後藤純男美術館
次世代へとバトンをつなぐ共創型のまちづくりー富良野の取り組みを事例にー “サステナビリティ×コミュニティ”シリーズ―vol.5」イベント

DAY3

・植樹プログラム

▲羽田空港から2時間で北の大地に到着

今回の合宿先である「富良野自然塾」は、旭川空港から1時間程車を走らせた場所にあり、富良野の街中から少し離れています。

富良野自然塾は、ドラマ「北の国から」の脚本家・倉本聰氏が2006年に塾長として創設。リゾートホテルのゴルフ場だった場所を元の森に還す自然返還事業と、地球の歴史を学ぶ環境教育活動を主事業として運営しています。SMBCグループも創設当初より活動の支援を続けています。

合宿のコーディネーターは富良野自然塾の中島 吾郎さん(以下中島さん)。15年以上にわたり従事してきた活動について説明を受けつつ、中島さんは自然返還事業はまだまだ道半ばだと語ります。

「ゴルフコースが森に還った姿を、私たちは生きているうちに見ることが出来ないでしょう。一度なくなってしまった森を蘇らせるにはそれだけの時間が必要だということです。だからこそこの事業をここで止めてはいけない。未来につなげていかなければなりません。」(中島さん)

富良野自然塾では、北海道の大自然を五感で感じながら、演劇的手法を用いた表現や仕掛けによって、地球環境・環境の危機について学ぶことができます。こうしたプログラムは学校教育やCSR活動やSDGs教育の場として、数多くの企業研修に活用されてきました。
今回の合宿でも、その一部を体験してみました。

はじめに体験したのは目隠しをして森の中を歩くプログラム。2人1組になって、一人が案内人となって、もう一人が目隠しをしたまま手を引かれて道を歩きます。

▲案内人は言葉を発さず相手の手を引くことだけでナビゲートするルールです。石が撒かれた道、丸太の道など目隠しをしているとちょっとした段差があるだけでどきっとします。

3分程の短い時間ですが、目で見ながら歩いている時より時間が長く感じたり、自分の足音や風の音や鳥の鳴き声など、周囲の音が鮮明に聞こえてきます。目隠しをしてほんの少し歩くだけで、普段私たちがいかに視覚情報に頼って生活しているのかを実感することができます。

「環境問題は実は私たちの目に見えないところでゆっくりと着実に進行しています。目に見えた段階では、もう手遅れになっているのです。」(中島さん)

土の匂い、葉っぱの音、足元の感触、木の変化。自然を近くで感じられる富良野だからこそ、目に見えない些細な自然の変化や地球のSOSをあらゆるところから感じ取ることができるのかもしれません。

次に、施設内に設置されたオブジェを使いながら、地球の成り立ちや今私たちが使っている資源がいかにわずかであるかについて学んでいきます。

▲地球の構造をあらわしたオブジェ。地球は核、マントル、地殻で構成されており、その外側を空気の層が覆っています。空気の層はこのオブジェの大きさでみると、たったの1mmほど。太陽や月との距離など、様々な偶然が重なって地球に水と空気が存在し、わたしたち生物が生活できる環境が整っています。

  • ▲石の板を地球の全体の表面積としたときに、海の水は中島さんが手にもっている瓶1本分程度しか存在しません。地上に生きる全ての生き物が飲み水として使用できる水は、さらに少なく、資源全体の0.01%程度にしか満たない量だといいます。

  • ▲緑に塗られたエリアは地球上に存在する森の表面積。しかし、一年間に赤い印の面積の分だけ、森が伐採されているといいます。その理由の一つは、私たちが普段活用する食用油。遠い日本の食卓に食用油を届けるために、熱帯雨林に生息する「パームヤシ」が伐採されています。

▲「地球の歴史」を表現した小道。460メートルの小道に地球が誕生してから約46億年の間に起きた出来事が表現されています。

▲地球の時間のほとんどは人間が存在していなかった時間です。

地球の歴史になぞらえた460メートルの道を歩いてみると、わたしたち人間が誕生してからの時間の短さを実感します。私たちはこの長い道のりで育まれた環境や資源を、ほんの一瞬で使い果たそうとしています。
実際に歩いてみることで、この先の道をどうしたら伸ばせるのか、そのために私たちはどう行動すべきかが問われていると感じます。

私たちは生活の中で、当たり前のように資源を消費し、環境に影響を及ぼしています。だからこそ、その普段の生活の中で「知らずに使うのではなく、知りながら使うことが大切だ」と中島さんはいいます。地球の道を1歩ずつ踏みしめるという体験を通じて、わたしたちはようやく日々の行動の重さに気づくことができるのかもしれません。

▲2日目に訪れた大雪山国立公園十勝岳本峰の真下にある望岳台の様子。大雪山の主峰旭岳を始め美瑛岳、美瑛富士、上富良野岳などが一望できます。

富良野が一望できる十勝岳は、活火山です。30年間隔で噴火するといわれている十勝岳が最後に噴火をしたのは1988年。ところが約33年間噴火していません。つまり、富良野は火山噴火のリスクに常に晒されています。
しかし、災害をもたらす火山が人々にとって悪かといえば、決してそうではないと、中島さんは語ります。火山活動があるおかげで、十勝岳の周辺の街では観光客が温泉を楽しむことができます。
都市部に住むことで、私たちは自然の脅威を克服した気持ちになっているのではないか。その裏返しとして、自然に支えられて生きていることも忘れてしまってはいないか。一面雪に囲まれた望岳台で、私たちは自然と共存しなければ生きられないという当たり前のことに気づかされました。

▲無数のカラマツや白樺が立ち枯れる青い池。観光地としても有名。

北海道には寒い土地でも育ちやすい白樺が多く生息しています。冬に落ちた枯れ葉が土の養分となり、森を豊かに育てていく自然の循環が行われています。しかし近年は、気候変動により冬の平均気温が10°C程上昇しており、枯れる葉が少なくなっているといいます。

最後は参加者全員で植樹をしました。
たった一本の小さな木ですが、豊かな自然を次の世代に残していくために必要な一歩です。

▲ハルニレ、トチノキ、ヤチダモの3種類を寄せ植えします。

自分が今、生活の中で使っている水やエネルギーはいったいどこからきているのかについて、都会で生活していては考える機会はほとんどありません。

私たちが使っている資源は地球という大きな循環の中から取り出されている

富良野の圧倒されるほどの自然を肌で感じるなかで、それがふと腑に落ちました。この合宿を通じてそのことに気づけたからこそ、「この豊かな自然を次世代につなげていきたい」という思いが芽生えました。

環境危機が訪れていると頭では理解していても、人の習慣や行動をいきなり変えることはなかなか難しいことです。自分の持つ環境に対する意識を更新し、解決のためのアクションを起こしていくためには、環境問題を「自分ごと」として捉えることから始まるのでしょう。

ぜひ皆さんも富良野の地を訪れたり、自然に触れる機会をつくったりすることで、環境や自分達のこれからの暮らしについて考えてみてはいかがでしょうか。(GGP事務局)

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イベントレポートはこちら。

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