2021.03.26 fri

ダイバーシティ&インクルージョン(第3回)注目が集まるジョブ型組織

日本総合研究所 渡辺珠子

最近、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、在宅勤務を含めたテレワークを推進する企業が増え、働き方がより多様になってきました。それに伴い、新しい組織のあり方としてジョブ型組織が注目されています。ジョブ型組織とは明確な職務規定書をもとに、ジョブ(職務)に適した人材を割り当てるという方法です。もともと働き方改革を推進したい政府や経団連が注目していましたが、テレワークの浸透に伴い、チームメンバーが物理的に分散している中でも成果を上げるための人材マネジメントとして、ジョブ型雇用を導入する企業が増えています。

ジョブ型雇用は経理や法務などの組織運営上必要な業務だけでなく、有期限のプロジェクトを実施する際にマーケティングや技術・開発、広報・PRなどの必要なスキルを社外から確保できる方法でもあります。社内に適した人材がいなくても、プロジェクト実施期間中のみ、専門スキルを持つ多様な人材を雇用することで、プロジェクトのアウトプット(結果)の品質を高められるという利点があります。
すでに、日立製作所、資生堂、富士通、KDDI、日本電産、タニタなどの企業がジョブ型雇用を採用しています。

ジョブ型雇用のメリットとは

企業にとってジョブ型雇用を採用するメリットとしては、業務やポジションに必要な人材を確保できることから、市場などの環境の変化に合わせて柔軟に組織・チームを立ち上げられることです。またもともと専門性の高い人材を獲得するため、育成のコストが削減できる効果があります。
特にデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれる昨今、IT関連のスキルを持つ人材確保が課題となっています。国内だけでなく海外も含めた人材獲得は今後ますます必要となるでしょう。ジョブ型雇用は海外では広く普及している方法であるため、海外人材獲得には有効です。

働く側としては、スキル次第で給与を上げられるチャンスが多いことや、就業時間ベースではなく職務ベースでの雇用であるため、時短勤務やリモート勤務などの柔軟な働き方を選択しやすいといったメリットがあります。さまざまな現場を経験できることからスキルを上げられる可能性が高いことも挙げられます。また最近は就職活動にあたって「どんな働き方が可能なのか」、「入社したら何ができるのか」を重視する学生が増えており、転職者の目線とほとんど変わりません。ジョブ型雇用は若者世代からも注目されるようになっています。

ジョブ型組織へ移行するKDDI

KDDIは20208月から新しい人事制度として「ジョブ型の人財マネジメント」を導入することを発表しました。就業時間ではなく、成果や挑戦、能力を評価して処遇に反映することから、プロフェッショナルの育成効果も狙っています。KDDIでは2019年からジョブ型の採用、2020年から社内副業制度を行っていましたが、この新しい人事制度を発表したことにより、社員のキャリア形成における選択肢がさらに広がったといえます。

新しい人事制度は2021年度の新入社員にも適用することが決まっていますが、この制度は完全な欧米のジョブ型ではなく従来の日本型の人事制度のよいところも残している点がKDDIの特徴です。最初から自身の専門が決まっていなくても、入社後の研修や業務を通じて、高めたい専門性やキャリアを考え、専門分野を選択していくことができる「ハイブリッド型」なのです。

また、KDDIでは新しい人事制度の発表時に「KDDI新働き方宣言」も発表しています。その中で多様な人材が持つ多様な能力を企業活力につなげる姿勢を打ち出しています。

ジョブ型雇用を推進していくと、働き方や処遇の多様化もさることながら、多様な人材をマネジメントすることになります。従来の人材マネジメントを大幅に変更する必要がありますし、それに伴って労働組合との様々な調整や社内のインフラの刷新が必要になるケースも出てくるでしょう。ジョブ型雇用への移行は企業規模に関わらず容易なわけではありません。ただし、多様性を受け入れ、企業の活力へと繋げる組織が競争力の底上げを実現すると考える企業が増え、そのためにジョブ型雇用に注目が集まっているのもまた事実なのです。

  • TOPに戻る