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未来2021:GGP特別セッション 社会的インパクトと企業価値について

Date: 2021.03.12 FRI

  • #ソーシャル

  • #ESG投資・開示

社会的インパクトが、企業経営・金融市場にとって大きな意味をもちつつある——。そう語るのは、ソーシャルバリュージャパン(SVJ)代表理事の伊藤健氏(慶應義塾大学SFC研究所上席所員)です。社会的インパクト評価の第一人者である同氏は、20201210日に行われたインキュベーション・アクセラレーションプログラム「未来2021(*1)」のGGP特別セッションの席で、今なぜ社会的インパクト評価が注目されているのか、その背景となっている企業の社会的価値評価の指標の変化や社会的投資の世界的な拡大の動向について語りました。

その後「社会的インパクトが企業にもたらす意味を探る」と題して、伊藤健氏と三井住友フィナンシャルグループ企画部の竹田達哉サステナビリティ推進室長がクロストークを行いました。

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動画再生時間 約18分

Part1 社会的インパクトの創出と企業価値の関係

動画再生時間 約19分

Part2 社会的インパクトが企業活動にもたらす意味を探る

 レポート 

Q1(竹田):社会的インパクトを生み出すために、企業はどのような考え方やケイパビリティが必要なのでしょうか。

A1(伊藤):日本では、利他の精神や三方よしなどを社是に掲げている企業も多く、文化と社会的インパクトのガバナンスのプロセスに親和性があると言えます。今後も、その理念に基づいて経営を行うために、経営指標として社会的インパクトが取り入れられていくのではないでしょうか。そのプロセスのなかで、社会的価値を志向する事業が構築され、再編され、進展していくと思います。

Q2(伊藤)GGPは、社会的インパクトを軸とした交流の場をつくる活動ですが、SMBCグループの中では、社会的価値や非財務資本をどのように捉えているのでしょうか?

A2(竹田) SMBCグループの20203月期の統合報告書を作る過程で、「価値創造プロセス」を抜本的に見直すこととしました。きっかけは、自分たちが生み出している価値の源泉とは何かを立ち止まって考える必要があると考えたからです。

従来の企業価値の考え方では、金融業ならば融資した貸出金残高など貸借対照表(B/S)に記載されるものでした。でも、現在はそれだけではなく、企業のブランド力など、ファイナンス理論のDCF法では説明できない非財務的資本がキャッシュフローの源泉になってきているということにたどり着きました。目に見えない非財務資本にキャッシュフローの源泉がシフトしていると。そうすると、これまでのB/Sだけではなく、非財務資本に対する目利き力が必要になってくると思います。
金融庁や経済産業省でも事業性評価融資というコンセプトを打ち出しています。それは従来の担保となる資産だけではなく、企業本来が持っている強みや差別化要因、社会に対してどういうインパクトをもたらすのかを掘り下げて見るべきだという発想だと理解しています。
GGPを運営するサステナビリティ推進室としては、社会的インパクトを生み出す源泉となる「企業の非財務資本」を計る指標が重要ではないかと考えているところです。

Q3(竹田):この視点で企業を評価しようとすると、非財務資本の価値を指標化していかなければなりません。ソーシャルグッドな事業がどのようにキャッシュフローに結びつくか説明できず、投資家がそれを理解できないために、金融市場が大きくならないという、鶏と卵のようなジレンマが出てくる。こうした企業や事業がどうやったら資金を調達できるようになるのか、そのためには、どのような仕組みが必要なのか、どうやって指標をつくっていくのか、教えていただけますでしょうか。

A3(伊藤):社会的インパクトと企業価値の関係は、まさに今、インパクトベンチャーと投資家の中で議論されているトピックです。

現在、企業の社会的インパクト評価について関心をもつ層は二極化の様相があると観察しています。ひとつは、業界トップランナーの上場企業です。将来的な企業価値に社会的なインパクトを反映することが、企業の継続的な成長を考える上で、現実的課題となっているからです。リーディングカンパニーは市場競争の優位性だけでなく、どうやって市場全体をつくっていくかという観点にならざるをえない。そのために新たな社会的価値を志向するのだと思います。

もうひとつの層が、概念そのものを作り出すインパクトベンチャーで、ソーシャルグッドの種となるモデルをつくりだす企業です。しかし残念ながらこの両者の間にはリンケージが確立されておらず、現状の企業価値評価の手法では、ベンチャー投資の価値付けに社会的な価値が反映されない問題があります。
その問題を解決するためにはマーケットが必要です。つまり、投資家とベンチャーを媒介する社会的インパクト評価の指標が必要ということです。

SMBCグループのような金融機関が、インパクト評価やインパクト投資について真剣に考えるのは非常によい事と思います。事業の財務的・社会的価値を評価し、投資家と企業を媒介する金融機関が入って、社会的価値が企業価値の重要な一部として評価されるエコシステムをつくっていくことが必要だと思います。実現する未来はすぐそこにあると思います。

竹田GGPは、ビジネスの種になるアイデアをもった企業が出会える場をつくり、ソーシャルグッドなビジネスの種をつくることを目的として立ち上げています。そうした企業と投資を媒介することは、まさにGGPでやっていきたいことです。
非財務的な価値が集まると、社会の価値、社会的共通資本に変わっていくと考えています。GGPの活動を通してSMBCグループは、社会の資本を厚くする活動のプラットフォームになっていくと考えています。

本日はどうもありがとうございました。

*1 未来2021……三井住友銀行が主催、みらいワークスが共同運営するインキュベーション・アクセラレーションプログラム。 スタートアップや既存企業のカーブアウト(事業分離)、これから起業する挑戦者をサポートし、様々な企業・投資家等をつなぎあわせ、協業のサポートを行います。

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