2021.07.05 mon

分散型社会に向け関心が高まるブロックチェーンとは?(前編)

GGPでは、2021715日に「つながりを見せるブロックチェーンが拓く可能性とは? サステナビリティ×コミュニティシリーズVol.2」を開催します。
本イベントに先行して、ブロックチェーンとはそもそもどういう技術なのかを日本総合研究所 先端技術ラボの金子雄介 エキスパートが解説します。ビットコインの出現で注目を集めたブロックチェーン。実は、金融のみならず分散型社会や持続可能な社会をつくる技術の一つとして関心が高まっています。前編では技術の概説、後編ではサステナビリティ分野でのブロックチェーン活用事例の紹介を行う予定です。また、GGPがお届けするラジオ”さすらじ”では2021年7月7日放送分にて、金子エキスパートによる本記事の解説をお届けします。(GGP事務局)

日本総合研究所 先端技術ラボ 金子雄介

ブロックチェーンとは、取引データのまとまり(ブロック)を暗号技術によって過去から1本の鎖(チェーン)状につなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術です。
データの破壊や改ざんが極めて困難なこと、システムが停止する可能性が低いことなどの特徴をもつことから、ITシステムに大きな変革をもたらす可能性があります。
ブロックチェーンの概念自体は、目新しいものではありません。注目を集めたきっかけは、2008年に発表された暗号資産(仮想通貨)ビットコインの仕組みに採用されたことです。以来、暗号資産が注目されるのと併せて、それを支えるブロックチェーンにも関心が集まるようになりました。

ブロックチェーンは、従来のITシステムと何が違うのでしょうか? 以下では、ブロックチェーンの主な4つの特徴を解説します(なお、ブロックチェーン製品によっては、この特徴のすべてではなく一部の特徴のみを持つものもあります)。

(1)中央集権型から分散ネットワークへ

従来のITシステムは、特定の管理者がシステム全体を集中管理する方式(クライアント・サーバ方式)が一般的です。
一方、ブロックチェーンは、コンピュータ同士で直接データファイルを共有する方式(ピア・ツー・ピア方式)を採用しています。特定の管理者を置かず、すべてのコンピュータが等しい機能をもちます。このように構成されるデータファイルを分散型台帳と呼びます(管理者を設けたコンソーシアム型ブロックチェーンや、組織内に閉じたプライベート型ブロックチェーンという形態もあります。元来の管理者不在の形態はパブリック型ブロックチェーンと呼びます)。

出典:経済産業省「ブロックチェーン技術を利用したサービスに関する国内外動向調査報告書」(概要)

(2)システムダウンしない高い可用性

分散型台帳の利点は、特定箇所の故障に強い点です。システム全体が停止する確率を極めて小さくしています。実際、ビットコインは20091月のシステム開始以降、停止することなくブロックを作り続けています。また、ブロックチェーンの台帳は、数多くのコンピュータに複製保管されています。台帳が消失する事態は、限りなくゼロに近いでしょう。
もっとも、ブロックチェーンはインターネット上で動く前提ですので、インターネット接続に障害が発生した場合は例外です。

(3)データを安全に守る改ざん耐性

ブロックチェーンのブロックは、取引データのまとまりと、ブロックを連結するための情報(直前のブロックの情報など)で構成されます。これは、データの破壊や修正に極めて強いデータ構造となっています。
ある取引データを痕跡なく修正するには、その取引データが含まれるブロック以降すべてのブロックを、矛盾なく修正する必要があります。一方、その間も、ブロックは増え続けます。ブロックの修正速度がブロックの追加速度を超えられないため、現在の技術では痕跡なく修正することは不可能です。

(4)データの正しさを担うコンセンサス・アルゴリズム

管理者不在の台帳は、追記できる1人を不公平感なく決める必要があります。加えて、台帳の持続性(サステナビリティ)の面では、誰も追記しなくなる事態は避けたいものです。追記作業にはインセンティブ(報酬)が必要でしょう。
分散型台帳の更新方法を決めたルールを、コンセンサス・アルゴリズム(合意形成アルゴリズム)と呼びます。ビットコインは、プルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work、作業量の証明)という仕組みを採用しています。これは、膨大な計算量の暗号を解くという計算競争の勝者(コンピュータ)に、ブロックを作る権限(取引データの承認権限)を与えるものです。さらに報酬として、ビットコイン(20216月時点では6.25BTC。加えて、ブロックに含まれる取引の手数料の合計)が与えられます。
ビットコインの計算競争に参加する人の動機は、明らかに報酬目当てです。この計算競争は、金採掘に例えて「マイニング」と呼ばれます。競争は激化し、莫大な量の専用計算機が用いられています。個人が参入することは実質不可能です。一方、ブロックチェーンへのデータ追記速度を上げるために、プルーフ・オブ・ワークに代わる別のコンセンサス・アルゴリズムを採用したブロックチェーンもあります。

(1)まずは暗号資産

ブロックチェーンは、その誕生当初は、ビットコインといった暗号資産による価値の直接交換に使われていました。しかし、当初期待されていたような、安価・高速な送金手段としては普及していません。その理由として、①QRコード決済サービスといった、ブロックチェーンを使わずに安価・高速な送金手段が普及したこと、②暗号資産の送金手数料が高騰し、従来の送金手段と比べて価格優位性が無くなったこと、が挙げられます。
現在、各国の中央銀行が研究を進めている「中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency: CBDC)」に、ブロックチェーン技術が使われることが期待されています。CBDCは暗号資産と異なり、中央銀行が発行することから、紙幣や硬貨と同様の信用をもち、安心して流通できることが期待されています。

(2)次にトークン

ブロックチェーンの報酬として発行される暗号資産の技術を応用して、誰もがブロックチェーンを用いて、ポイントや株のようなものを発行できるようになりました。これをトークンと呼びます。トークンは、その発行者が定めたモノやサービスと交換できるデジタル引換券のようなものです。企業内ポイントや地域通貨、デジタル証券といった用途が、トークンに期待されるようになりました。
しかし、簡単に発行できる反面、ずさんな発行・販売も世界的に問題となりました。日本では、資金決済法や金融商品取引法が20205月に改正され、ルールが整備されました。

(3)有形無形の登記

改ざん耐性が高い特徴を活かし、さまざまなデータをブロックチェーンに登録する(いわば登記のようなもの)も行われるようになってきました。
2015年に始まった英エバーレッジャー社によるダイヤモンド情報の登録は、その初期の事例の1つです。最近は、ブロックチェーンがもつデータの安全な転々流通性に着目して、サプライチェーンや貿易業務といった分野での活用が進んでいます。
また、個人の属性情報をブロックチェーンに登録する試みも始まっています。従来のIDやパスワードを管理する仕組みは、サービス提供者側に情報の管理を委ねています。それに対し、管理主体が介在することなく、個人が自分自身の属性情報を管理できるようにすることを目指す考え方を、自己主権型アイデンティティ(Self-Sovereign IdentitySSI)といいます。国連は、持続可能な開発目標(SDGs)の中で「2030年までにすべての人に出生証明を含む法的なアイデンティティを提供する」目標を定めています。国連などが参画するID2020という取り組みでは、難民の身元を保証できる仕組みを、SSIに基づき構築しようと検討しています。この実現に、ブロックチェーン技術が活用されることが期待されています。

本記事(前編)では、ブロックチェーンとはどのようなもので、どのような使われ方をしているかについて、その概要をご紹介しました。次回(後編)は、サステナビリティ分野における活用事例や、ブロックチェーンが抱える課題についてみていきます。

著者プロフィール

金子 雄介

株式会社日本総合研究所 先端技術ラボ エキスパート
2015年からブロックチェーン等の技術を用いた金融サービスの企画および開発に従事。2019年から現職。
(公財)金融情報システムセンター(FISC)「金融機関におけるブロックチェーンに関するワーキンググループ」委員を歴任。
著書:「ブロックチェーン技術概論 理論と実践」(講談社、2021年、共著)。

つながりを見せるブロックチェーンが拓く可能性とは? ”サステナビリティ×コミュニティ”シリーズーvol.2

日時:2021年7月15日(木) 16:30-17:40
ゲスト:株式会社chaintope 代表取締役CEO 正田 英樹
定員:100名
配信:Zoom(ウェビナー)

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