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COP26の成果を読み解く(前編)——1.5℃を明確化

Date: 2021.12.06 MON

  • #グローバル動向

  • #気候変動

  • #初学者

COP26のウェブサイト 出典:https://ukcop26.org/

日本総合研究所 渡辺珠子

20211031日からイギリスのグラスゴーで始まった国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)は、予定よりも1日延長して1113日に閉幕しました。コロナ禍からの景気回復の方針として世界各国がグリーンリカバリーとカーボンニュートラルを掲げ、昨年来、さまざまな国際会議などで脱炭素に関連する目標や方針が議論されてきました。今年に入ってからは、国際エネルギー機関(IEA)や国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などが、エネルギー利用と地球温暖化に関する調査研究結果を公表し、世界から注目を集めました。これらの議論を踏まえ、国際社会の脱炭素の具体的な方針が議論される場として期待を集めたのが、COP26です。今回は「COP26の成果を読み解く」と題し、2回にわたってCOP26で何が議論され、その結果何が決まったのかを成果文書である「グラスゴー気候合意(Glasgow Climate Pact)」をもとに概観していきます。

GGPでも何度かCOP26について触れてきましたが、まずはあらためてCOP26とは何かを簡単におさらいしておきましょう。COP26は国連気候変動枠組条約を批准している約200の国と地域が集まり、気候変動を中心とする地球温暖化対策の国際的な枠組みを決める会議のことです。気候変動に関する国際交渉の場として最も重視されています。

COP26の議論の主要テーマとして掲げられていたのは、2030年の地球温暖化ガス削減目標の引き上げ、国家間の排出量取引制度などのルールの詳細の確定、先進国から途上国に対する年間1,000億ドル以上の気候変動対策資金の動員などです。

20218月にIPCCが発表した第6次報告書は、検討されたどのCO2排出シナリオにおいても、地球の表面温度は今世紀半ばまで上昇し続けることは避けられず、2030年代始め頃までに1850年〜1900年と比較して1.5℃を超える可能性があることを指摘しました(関連記事) COP26ではこのIPCCの報告書をうけ、工業化以前の水準より1.5℃以内に抑える努力を追求することが盛り込まれました。しかしそのためには、2030年までに地球温暖化ガスを大幅に削減しなくてはなりません。グラスゴー気候合意には、「世界の二酸化炭素排出量を2010年比で2030年までに45%削減し、今世紀半ばにはネット・ゼロにすることが必要である」という一文が盛り込まれました。

具体的な削減対象として議論になったのが石炭火力発電所です。グラスゴー気候合意の当初の文書案では、石炭火力発電所を「段階的廃止(phase-out)」とする文言が入っていました。これに対し、石炭火力発電に強く依存し、現在も石炭火力発電所の建設を進めているインドが反対し、これに中国が同意を示したことにより「段階的削減(phasedown)」と表現を弱めての合意となりました。なお非効率な化石燃料への補助金については、「段階的廃止(phase-out)」と記載されています。

表現は弱まりましたが、COPの合意文書として初めて石炭火力発電や化石燃料に言及し、世界が向かうべき方針に合意したという点では意義があるとされています。

次回は各国の削減目標についての議論と、排出権取引のルールに関する議論について見ていきます。

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