GREEN×GLOBE Partners

ARTICLES

サステナビリティについて知る

COP26の成果を読み解く(後編)――カーボンクレジット制度化に注目

Date: 2021.12.17 FRI

  • #グローバル動向

  • #気候変動

  • #初学者

日本総合研究所 渡辺珠子

前回も述べた通り、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の成果文書であるグラスゴー気候合意には、「世界の二酸化炭素排出量を2010年比で2030年までに45%削減し、今世紀半ばにはネット・ゼロにすることが必要である」という一文が盛り込まれました。しかし、COP事務局は2021112日に、パリ協定締約国193か国が提出した排出削減目標がすべて達成されたとしても、2030年の排出量は2010年比でおよそ13.7%増加するという分析結果を公表しています。前回は地球温暖化ガス削減の具体策として石炭火力発電所に関する議論を紹介しましたが、もちろん各国の削減目標をさらに引き上げることが必要です。グラスゴー気候合意では各国に対して2022年までに2030年目標を再検討し、強化することに合意しています。

主要国・地域の地球温暖化ガス削減目標については、20214月に開催された気候変動サミットについての記事でもまとめましたが、ここでも再度目標を見てみましょう。COP26開催にあたって、下記の主要国・地域の削減目標は4月時点から変更はありません。日本はこれまで2013年度比26%減としていたのを、4月に大幅に引き上げて46%削減を掲げました。10月に閣議決定された6次エネルギー基本計画を踏まえ、取組みを推進していく予定です。

石炭火力発電所の「段階的廃止(phase-out)」に反対したインドは、世界銀行の調査によると、CO2排出量が世界で3番目に大きい国です(*1)。そのインドのモディ首相がCOP26開催中に新たな削減目標として2070年までに排出量ネット・ゼロを公表しました。また具体的な取り組み計画として、2030年までにインドのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーのシェアを50%に引き上げることも併せて公表しています。しかし中国と共に、インドに対しても、前倒しでの削減を求める声が上がっています。

主要国・地域の地球温暖化ガス削減目標

日本

・2030年度までに2013年度比46%削減
・2050年までに排出量ネット・ゼロ

米国

・2030年までに2005年比5052%削減
・2050年までに排出量ネット・ゼロ

中国

・2030年までにCO2排出量をピークアウト
・2060年までにCO2排出量をネット・ゼロ

英国

・2030年までに少なくとも1990年比68%削減
・2035年までに1990年比78%削減
・2050年までに排出量ネット・ゼロ

EU

・2030年までに少なくとも1990年比55%削減
・2050年までに排出量ネット・ゼロ

インド

・2030年までにエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーのシェアを
 50%に増加
・2070年までに排出量ネット・ゼロ

出典:国連気候変動枠組条約(UNFCCC
NDC Registry, UK government press release published 20 April 2021, NBC News published 2nd November 2021

World Bank “CO2 emissions”( https://data.worldbank.org/indicator/EN.ATM.CO2E.KT)のデータを元にGGP作図

COP26では、COP24COP25で合意に達することができなかった、国家間の排出量取引制度などの市場メカニズムなどが含まれるパリ協定6条のルールの大枠が合意されました。これによってカーボンクレジットの取引などを通じ、世界のCO2排出量削減が加速していくことが期待されています。

カーボンクレジットとは、再生可能エネルギーへの転換、省エネルギー機器の導入、植林などの森林管理等によって実現した地球温暖化ガス削減・吸収量を、定められた方法論によって数値化し、取引可能な状態にしたものを指します。他の国・地域のカーボンクレジットを“購入”することによって、自国が生み出してしまった地球温暖化ガスを相殺する(オフセットする)ことが可能になります。

COP26では合意に至ったカーボンクレジット取引に関するルールの中には、二重計上防止も含まれます。これはカーボンクレジットを発行した国・地域(地球温暖化ガスを削減した国・地域)と、購入した国・地域の両方で削減実績を計上してしまうという問題を解消するためのもので、カーボンクレジットの取引契約時に両国が二重計上しないことが明確化されました。

各国の削減目標引き上げの再検討が合意されたこともあり、カーボンクレジット取引が活発化する可能性は十分高く、脱炭素に向けた取り組みを活性化させたい多くの企業が参画することも期待されます。ただ売買すればよいのではなく、今後はカーボンクレジットの取引と各国の削減目標との整合性など、グローバル、ローカル双方での制度設計が必要になります。カーボンクレジット取引を検討する企業は、ビジネスを展開する国・地域での制度構築を注視することが重要です。

1:(出典)World Bank “CO2 emissions”

  • TOPに戻る

関連記事

NEWS LETTER

GGPの最新情報をお届けするNews Letterです。
News Letterの登録は以下からお願いいたします。
(三井住友フィナンシャルグループのサイトに遷移します。)