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GGP Edge Program支援先は食や住、ライフスタイルに新たな価値もたらす3社に決定 ——フーディソン、三谷産業、三和物産

Date: 2024.01.11 THU

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選考委員。左から村上芽、豆野皓太、山田仁一郎の3氏

SMBCグループは2023年、本業を通じた社会的価値創出を支援するGGP Edge Program(以下Edge Program)をスタートしました。

対象となる事業プランを公募した結果、初回の支援先として選考されたのは、生鮮食料品流通のDXを手掛けるフーディソン(東京都中央区)、循環型で長く使用できるモジュール家具を生産・販売するTeseraを子会社に持つ三谷産業(石川県金沢市)、葬祭にまつわるイノベーションに挑む三和物産(石川県金沢市)3社です。
今後、GGP事務局と日本総合研究所、そして選考委員や外部有識者は、各社と共にロジックモデルを磨き上げ、より高い社会的価値を創出する事業に発展するためのご支援をしていきます。


各社のインタビュー記事(フーディソン、三谷産業、三和物産)は、こちらからお読みいただけます。
ブルーエコノミー実践で、もっと楽しい食を——フーディソン
循環型モジュール家具で伝統産業を世界に伝える——Tesera(三谷産業グループ)
死生観をリ・デザインする“明るい葬祭用品メーカー”——三和物産

最終選考は、GGP事務局と日本総合研究所による一次選考を経た企業を対象に、専門領域の異なる選考委員による多角的な視点で行われました。委員はSDGsや企業経営を専門とする日本総合研究所の村上芽氏、アントレプレナーシップや経営戦略を専門とする京都大学教授の山田仁一郎氏、環境経済学を専門とする東北大学助教の豆野皓太氏の3氏です。選考基準となる、事業の「先駆性」や「先見性」、「具体性」に照らし合わしながら議論した結果、以下の3社を選出しました(五十音順)。

「世界の食をもっと楽しく」を理念に掲げるフーディソンは、生鮮食料品の流通をアップデートさせる事業で応募しました。中でも、生産調整が難しく足が早いために困難とされている鮮魚のECサイト運営の先駆性をアピールしました。

効率的な海洋資源の活用など水産業が抱える課題をDXをもって打開していく本事業のポテンシャルに期待した。DX化に伴う流通に関するデータの蓄積はアカデミズムとの連携も可能にし、持続的な資源管理にも貢献できうる」と、豆野氏はこの事業の先にある海洋資源活用に期待を寄せました。また「今後はたんぱく質をどのように摂取するかが、人類にとっての大きな課題だ。この事業により水産業が発展していくという視点がよい」(村上氏)、「長い食文化の中で、日本には鮮魚の保存や調理など知見の積み重ねがあるが、近年は摂取量が減っている。それに対してDXを使って課題解決を試みる着眼点を評価。ぜひグローバルな視点でも社会的インパクトを与えて欲しい」(山田氏)と、将来的な食糧調達や食文化にもたらす影響も評価のポイントとなりました。

金沢市を拠点に創業約100年を迎える三谷産業は、その100%子会社のTeseraが展開する「フレキシビリティ・サステナビリティ・ミニマルデザインを兼ね備えたモジュール家具(Tesera)の開発・販売」事業で応募しました。Teseraは、アルミフレームと接合金物を用いモジュール化することで、容易に部材をリサイクルできるというものです。

これに対し、村上氏は「格好のよい具体的なモノを通じたプレゼンテーションが理解しやすかった。家具などをより柔軟に扱えるようになれば、オフィスの縮小化や分散化などを伴う新しい働き方につながるかもしれない」と、家具を起点に人々のライフスタイルに変化を与える可能性を示唆しました。山田氏もまた「家族や会社の流動化を捉え、家具のライフサイクルを提案している。Edge Programを通して提案の精度を高めて欲しい」と社会物質性の観点から、新たな価値転換の可能性に期待を寄せました。豆野氏は「サーキュラーエコノミーを実践する循環型の設計に加え、木造木組みの伝統的な知識を接合部のデザインに取り入れて磨きをかけているのが新鮮だった」と意匠性の高さも評価しました。

「死生観のリデザイン」という大きな主題を掲げたのは、葬祭用品の企画や製造販売を行う三和物産です。「死」や「別れ」がタブー視される傾向にある日本の現状に対して、死生観を問い直すことで新たなビジネスが生まれる可能性を示しました。日本人の持つ死生観を問い直しリデザインすることで、葬儀に関する消費者の知識や選択肢を増やし、BtoBだけでなくBtoCへ商流を増やす事業を提案しています。

私たちが見ないようにしている文明の盲点が死生観だと思う。それを見直すことは、健康寿命の考え方や医療経済など、今後の経済に大きな影響を与える」と山田氏は、このテーマ設定に共感を示しました。村上氏は「死生観とサステナビリティを結びつけたところが先駆性で突出していた」と位置づけ、豆野氏は「これから多死社会を迎える日本で、発展していく可能性がある」と評価しました。

審査後、「社会的な課題に対して大きな志を抱きつつ、適正な方法で事業を進めている——。そうした真っ当で大振りなストーリーの創出に今後も期待したい」と山田氏は、社会課題を的確に捉え、かつ実践することの重要性を訴えました。

選考委員3名とEdge Program企画チーム(GGP事務局・日本総合研究所)による選考会の様子

選考後、未来社会における企業や事業像を選考委員3氏に伺ってみました。すると、委員の眼差しの先にあるものは、惰性化している社会構造やシステムを疑い、異なる業界に横串を刺していくことでした。

衣食住の中で今回の公募では提案がなかった「衣」に対して、村上氏は今後の提案に期待します。「資源の少ない日本の中でいかに衣服のリサイクルを進めるのか——。これはファッション業界だけでなく、廃棄物の処理システムにも関係する」と指摘。
それを受けて山田氏は、「産業処理もエネルギーも、自治やガバナンスが問われる事柄。今後は、脱炭素の影響などで、コストバランスも変化するはず。老朽化が進む交通等の暮らしのインフラなども含め、自治体がどこまでやるべきなのか——」と現代の私たちに突きつけられている大きな課題を指摘しました。
豆野氏は、「三谷産業(Tesera)や三和物産などは、過少利用が問題視されている木材資源をはじめ地域の自然資源の活用と結びつけた事業展開もできるのではないか。地域の中でまだ気づいていない課題を解決するための斬新なアイデアが、ビジネスとしてグローバルでも成長するとよい」と、地域循環型の発想が汎用的な価値を生む可能性を語りました。

最後に山田氏は、「大きな課題に対して挑む“グランドチャレンジ”が世界共通で求められている。日本の技術力や経済力を基に巨視的(マクロ)な機会認識をすれば、中小企業やスタートアップ企業も、グローバルにもっと打って出られるはず」と、日本企業がもつポテンシャルに言及しました。

Edge Programでは、1企業に限らず、さまざまな業種や業態、産官学が連携し、グランドチャレンジする事業提案を今後も支援していきます。

(文:有岡三恵/Studi0 SETO 写真:生田将人)

左から選考委員の山田仁一郎氏、村上芽氏、豆野皓太氏

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