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気候変動と人口動態から考えるサステナビリティ 2023-2024(前編)

Date: 2024.01.17 WED

  • #初学者

  • #気候変動

村上芽氏

GGPでは、サステナビリティの視点で1年を振り返り、これから注目すべき事柄や必要な行動を考えるための企画を2021年より続けています[*1]。
2024年に向けては、気候変動と人口動態という世界的な2つのメガトレンドに着目します。
「世界で起こるさまざまな事象を、その根底にある大きな潮流から紐解きたい」と言う、日本総合研究所の村上芽氏にお話を伺いました。

——気候変動と人口動態になぜ着目するのでしょうか。

21世紀に入って以降、私たちが直面している多くの課題の根っこには、気候変動と人口動態があります。この2つは世界規模での大きな潮流があり、すぐに変えられるものではありません。その大きな流れを把握した上で、2023年に起こった出来事を見ていく必要があると思っています。

——気候変動について2023年でとくに着目しているトピックは?

2023年は国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰」と表現したように、史上でもっとも暑い年でした。日本でも12月に最高気温が20度を超えるなど、もう実感しない人がいないところまできています。

キャプション:1850年から2023年までの世界の年平均気温の平年差(1850-1900年比)。2023年の平均は10月までのデータに基づく。5つのデータセットより 出典:WMO Provisional State of the Global Climate 2023

米国が独自で出している報告書[*2]を見ると、巨大災害がこの5年間は3週間に1回起きています。それ以前の4カ月と比較すると、45倍の気候変動による災害が起きていることになります。

米国では現在、平均して3週間ごとに10億ドル規模の気象・気候災害が発生している 出典:The Fifth National Climate Assessment, USA

米国で起こった10億ドル規模の災害の数 出典:The Fifth National Climate Assessment, USA

2023年のCOP28は、アラブ首長国連邦のドバイで行われ、2年連続してアラブでの開催となりました。気候変動の悪影響に対応するための基金を含む枠組みなどについてスムーズに話が進行した印象があります。一方で、化石燃料の廃止については「転換」を合意するにとどまりました。クロージングスピーチでは「化石燃料の終わりの始まり」と表現されました。

——COP28ではパリ協定で採択された1.5度目標達成のための緊急的な行動などについて語られました。世界ではどのような動きが起こっているのでしょうか。

今回は各国の取り組みや進捗状況を評価する初めてのグローバル・ストックテイクが行われ、現状では1.5度目標が厳しいという認識に基づき、「2035年までに2019年比較60%削減が必要」と明記されました[*3]。

途上国には赤道に近い国々が多く、激しい気象被害があるので高い関心があるけれど、経済発展のためにやはり化石燃料が必要と考えてしまいがちなところがあります。なお、紛争が起こると温暖化対策への取り組みは吹っ飛んでしまいます。省エネな戦争はありません。

最終的に国毎の主権のもとでどれだけ実現できるのか——。意思決定の構造に大きく関わります。国レベルでの意思決定は国内産業の影響を受けるので、実効性を高めるためには、産業界が進んで行動しないといけないと感じています。例えば再エネの利点をもっと高めることができれば、お金がさらに動く可能性があります。そうした状況をいかに早くつくっていけるのかが鍵ではないでしょうか。

——世界の約70カ国でカーボンプライシング(CP)が導入されつつありますが注目を集めています。一方、日本は2033年からエネルギー業界だけがCPをやるというスタンスです。

環境を経済成長のテコにしているのがもっとも顕著なのは欧州です。202311月、日本でもカーボンクレジット制度がようやく動き始めましたが、日本がCP10年先延ばしにしているのは、ほとんどやらないと言っているに等しいのではないかと思います。

規制を行うことで技術力や競争力も高まったり、環境面で頑張ることで経済も恩恵を受けたりする可能性があると思いますが、そこへの関心が薄いという印象があります。国の経済対策を見ても、環境の話がほとんど入っていませんから。

——日本はエネルギーの自給率を高める必要性があると思いますが、エネルギー政策についてはいかがでしょうか。エネルギーミックスのバランスも、再エネにシフトしていく可能性はあるでしょうか。

化石依存のエネルギーを減らし、再エネを増やすことは現在の技術だけでもできることはまだいっぱいあると思います。

例えば、都会の屋根に太陽光発電をもっと設置することもできます。また、九州では、太陽光の発電量が多すぎて使い切れなかったという話が増えています。蓄電池の普及や、電気の使い方改革を急ぐべきだと思うのですが……、エネルギー全体の計画がバラバラに見えてしまうのが現状です。

また、日本は海に囲まれており、その自然資本をもっと生かすこともできるはずです。身近な宝物に目を向け、海洋土木の技術などを磨いていくことも大事ではないかと思います。

日本国内の電源構成。2019年と2030年(想定)の比較 図:資源エネルギー庁の資料を基にGGP作成

いっぽうで、再エネ専門の企業を大企業が買収したり、50代後半でもサステナ分野に転職したり、起業したりする話を複数耳にしました。新しい産業が生まれて雇用が動く、これはひとつの成果だと思いますし、すごく元気になる話だと思います。

20231210hoops link kobeにて、聞き手:多田理紗子/日本総合研究所、山北絵美、前田麻里/SMFG 文:有岡三恵/Studio SETO

*1 サステナ注目トレンドTOP10【2021年を振り返る】足達英一郎氏が見る2021年とは?【サステナ注目トレンド】村上芽氏が見る2023年とは?
*2 The Fifth National Climate Assessment, USA
*3 United Nations, Framework Convention on Climate Change, 13 December 2023

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