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【GGP3周年イベント開催】持続可能な社会と利益追求を両立、挑戦者が語る新時代の企業経営

Date: 2023.10.11 WED

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20237月、GREEN×GLOBE Partners(以下GGP)は設立から3周年を迎えました。これを記念して同月11日、サステナブルな社会を目指して変革に挑むイノベーターたちを招きトークセッションを開催しました。GGPパートナーに加えて多くのビジネスパーソンが参加しました。

GREEN×GLOBE Partners 3周年記念イベント】
ちきゅうのみちくさ展寄り道して考えるサステナビリティ― トークセッション

日時:2023711日(火) 1400-1645
共催:株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社三井住友銀行、株式会社ロフトワーク、株式会社コングレ

  • イベントレポート

イベントは、英蘭ユニリーバ元最高経営責任者(CEO)のポール・ポールマン氏のビデオメッセージで幕を開けました。ポールマン氏は、サステナブル経営にいち早く取り組んできた世界的な経営者です。2009年から10年間、CEOとしてユニリーバをサステナブル経営のリーディングカンパニーへと変貌させ、退任後も持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて精力的に活動しています。
20233月にはSMBCグループのグローバル・アドバイザーに就任しました。

ポール・ポールマン氏のビデオメッセージ

ポールマン氏は「有限な地球で無限に成長し続けることはできない」と述べ、気候変動対策や生物多様性の確保などの取り組みが遅れていることに警鐘を鳴らしました。政府や国際機関の対応も不十分だとし、「企業こそが重要な役割を果たす必要がある」と訴えました。

最初のトークセッションは「B Corp」[*1]を例に新たな価値創造について議論しました。B Corpとは「B Corporation」の略で、サステナブル経営を評価する米国の非営利団体B Labが運営している認証制度です。

セッション1 「B Corpや共助の取り組みから学ぶ、サステナビリティ時代の価値創造とビジネス変革」

登壇したのは、長野県上田市を拠点に古本買取・販売事業を展開するバリューブックス取締役の鳥居希氏。発酵技術で食品廃棄物などを再資源化するスタートアップ、ファーメンステーション代表取締役の酒井里奈氏。デジタル技術を活用した地方創生事業を手掛けるNext Commons Labファウンダーの林篤志氏。

バリューブックスはB Corp認証を申請中で、ファーメンステーションは2022年に取得、Next Commons LabB Corp取得の計画は今のところありません。3社の立場は異なりますが、共通するのは既存の枠組みに捉われず新たな価値創造に挑んでいることです。

バリューブックスは2022年6月、B Corp認証を取得するためのハンドブックを日本語に翻訳して出版しました。鳥居氏は、世界では約7000社がB Corp認証を取得している一方、日本では30社に満たない現状を示し、「ハンドブックでB Corpのムーブメントを起こしたい」と語りました。

鳥居希氏(右)

B Corpの認証には、ガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客の5分野で厳しい審査があります。ファーメンステーションの酒井氏は「B Corpは自分たちを律する仕組みとして都合がいい」と認証取得の理由を説明しました。

同社は、食品ロスや余剰農産物など未利用のバイオマスから、発酵技術を使って機能性素材を開発・生産しています。
「利益の追求とソーシャルインパクトとの両立を図っていく」(酒井氏)との決意を語りました。

酒井里奈氏

一方、Next Commons Labの林氏は既存の枠組みにこだわらず、ゼロから最適解を描き直すことの大切さを強調しました。
林氏は、限界集落となった新潟県山古志村で実施した「デジタル村民」のプロジェクトを紹介。非対称トークン(NFT)を使って特産品である錦鯉のデジタルアートを販売し、世界中から1000人規模のデジタル村民を迎え入れました。その数はリアルの村民800人を上回ります。

林篤志氏

林氏が手掛けるもう一つのプロジェクト「Local Coop」は、「第二の自治体をつくる」がコンセプトです。
住民や自治体、民間企業などが助け合いながらコミュニティーの活性化につなげる仕組みで、地域の特性に合わせながら全国展開することを目指しています。
林氏は「今、地方はどこも『お手上げ』状態。だからこそ企業には入り込むチャンスがある」と、企業の積極的な参加を促しました。

セッション2 「DE&I実現に向け、当事者視点で社会構造を再構築するには?」

次のトークセッションはダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)について議論しました。
生まれつき骨が折れやすい病気で車椅子生活を送りながら、ユニバーサルデザイン及びユニバーサルマナーのリサーチ&コンサルティングを提供するミライロ代表取締役社長の垣内俊哉氏。歩行が難しくてもペダルを漕いで動かせる車椅子「COGY」を開発・販売するTESS代表取締役の鈴木堅之氏。「コミュニティナース」の人材育成事業などを手掛けるCommunity Nurse Company代表取締役の矢田明子氏が登壇しました。

ミライロの垣内氏は「日本はバリアフリー化がとても進んでいる」と環境面での障害者対応を評価する一方、「多様性に対する理解が不足している」と意識や情報は十分ではないと課題を指摘しました。

垣内俊哉氏

世界で暮らす障害者の総人口は18.5億人、障害者と家族、友人を合わせた購買力の総額は13兆ドルに上ります。障害者対応は「社会貢献だけではなく、もうけるアプローチとして考えていくべき」(垣内氏)と語りました。

TESSの鈴木氏は、COGYの開発・販売で苦労した経験から、課題解決に取り組む挑戦者を応援する意識の醸成が必要だと訴えました。開発当初は「車椅子にペダルをつけてどうするんだ?」「誰が使うんだ」という否定的な声ばかりだったと振り返りました。鈴木氏は「『できるわけがない』という発想から抜け出し、課題解決を目指す活動に賛同してくれる協力者を募集しています」と訴えました。

鈴木堅之氏

他方、コミュニティナース事業を手掛ける矢田氏は、「医療と介護がケアの専門職に委ねられている状況は完全に崩壊している」との見方を示しました。コミュニティナースとは、普段の生活の中で全ての人がケアの担い手になることを目指すコンセプトです。

矢田明子氏

矢田氏がこの事業を始めた背景には、父が亡くなった際の「なぜここまで病状が悪化するまで気づけなかったのか」と悔やんだ経験がありました。日々の人間関係の中で見守ってくれる人がいれば、もっと早く対処できたはず……。自らコミュニティナースを名乗り活動を始め、その後仲間を増やすためにスクール事業を立ち上げました。今では生協の配達員やパチンコ店の従業員などがコミュニティナースとして活躍しています。矢田氏は、「ゴールは1億総コミュニティナース」と力を込めました。

セッション3「GGP取組み紹介+GGPパートナー企業の事例紹介」

最後のトークセッションは、地域に根ざしたサステナブル経営のあり方について意見を交わしました。GGP参加企業の3社が登壇し、神戸市を起点とした地域活性化のプロジェクトを紹介しました。
環境負荷を低減した手法で日本酒をつくり、販売している神戸酒心館社長の安福武之助氏。訪日外国人向けに「食体験」の情報発信サービス「byFood.com」などを手掛けるテーブルクロスCEOの城宝薫氏。神戸市北区役所総務部地域協働課の山田隆太氏。日本総合研究所 創発戦略センターエクスパートの村上芽氏がモデレーターを担当しました。

神戸酒心館は昨年10月、再生可能エネルギーを使うなどして製造段階における二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにした日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」を発売しました。安福氏は「日本酒をより地球にやさしいお酒にアップデートしたい」と意気込みを語りました。テーブルクロスの城宝氏は「酒蔵ツアーなどの情報を発信して神戸市を盛り上げたい」とプロジェクト[*2]に参加した狙いを説明しました。

こうした企業の取り組みについて神戸市北区役所の山田氏は、「地域の活性化は行政だけではできないことが多い。民間企業の力を借りながらムーブメントを作っていきたい」と話しました。

イベントの最後に、三井住友フィナンシャルグループのチーフ・サステナブル・オフィサー(CSuO)の高梨雅之が登壇。
GGP3年間活動してきて、今では1500社(20237月当時)が参加しています。今後、このネットワークを活かして、社会的な価値を創出するコミュニティーを作っていきたい」と語り閉幕しました。

三井住友フィナンシャルグループ高梨雅之

(文:大竹 剛/エディットシフト、写真:村上 大輔)

*1 B Corpの詳細については以下の記事を参照
株主資本主義からの脱却(前編) ——ベネフィットコーポレーションとBCorp認証とは何か
株主資本主義からの脱却(後編) ——ベネフィットコーポレーションとBCorp認証がもたらす可能性

*2 神戸酒心館とテーブルクロスのプロジェクトの詳細は以下の記事を参照
GGP-based Project カーボンゼロ酒「福寿」を体験するガストロノミーツアーが始動(前編)——神戸酒心館×byFood.com
GGP-based Project カーボンゼロ酒「福寿」を体験するガストロノミーツアーが始動(後編)——神戸の食の魅力を世界に発信

動画再生時間:約165分

00:00:58 ポール・ポールマン氏のビデオメッセージ
00:09:06 セッション1「B-corpや共助の取り組みから学ぶ、サステナビリティ時代の価値創造とビジネス変革」
00:59:34 セッション2「DE&I実現に向け、当事者視点で社会構造を再構築するには?」
01:50:55 セッション3「GGP取組み紹介+GGPパートナー企業の事例紹介」
02:33:59 閉会のご挨拶(三井住友フィナンシャルグループ CSuO 高梨 雅之)

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