イベントレポート
GGP共創プロジェクト、始動! 社会課題解決に挑戦する、共創プロジェクトのテーマオーナー募集
Date: 2026.01.28 WED
#ソーシャル
#新規事業
#ESG投資・開示
「GREEN×GLOBE Partnersは、さまざまなパートナーとともに、環境・社会課題解決を目指します」
その理念を掲げて発足したGGPは、発足以来5年を経てパートナー企業・団体が1800を越えるコミュニティへと成長しました。
このリソースを生かし、複数の企業・団体による「社会課題解決に向けた共創と実践」への挑戦を伴走支援する「GGP共創プロジェクト」を2026年度から本格始動します。
2026年度に実施するプロジェクトのテーマオーナー募集に向けて、応募方法や2025年度の試行プロジェクトの概要を発表するイベントを、2025年12月10日、東京・丸の内にあるSMBCの事業共創施設HOOPSLINKで開催しました。
最初に、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)社会的価値創造推進部長の髙市邦仁が共創プロジェクトを開始する背景と今後の展望を説明。続いて、共創の具体的な事例「Community Drive プロジェクト」を日建設計執行役員で設計監理部門設計グループ代表の羽鳥達也氏が紹介しました。
イベントの後半では、2025年度に試験的にGGPで取り組んでいる2つのプロジェクト「少子化に向き合う社会デザイン会議」「食と農の社会課題にどう挑むか」の概要について、GGP事務局とプロジェクトに伴走するロフトワーク、日本総合研究所が紹介しました。
募集要項の詳細は、「GGP共創プロジェクト テーマオーナー 応募お申込みについて(受付期間:2026年1月30日迄)
共創×実装で社会課題解決のエコシステムを構築——気軽に挑戦できる場としてのGGP
2026年度から始動する「GGP共創プロジェクト」とは何か——。
「気候変動や少子高齢化、貧困格差など、社会の持続可能性に関わる深遠な課題に対し、複数の組織が企業や業界の枠を越え、1つの課題に向かって横断的にチャレンジする活動。社会を動かす新しい仕組みづくりです」。
SMFGで社会的価値の創造を推進する髙市は、そう定義付けました。
それは、現代社会が抱える様々な課題に対し、「具体的に取組み、社会実装に向けた実践に伴走し、支援する仕組み」(髙市)です。
そのためのキーワードとして髙市は「共創と実装」を挙げました。
出所:SMFG
GGPを共創の場として活用して欲しい
SMFGでは社会的価値の創造を経営の柱に掲げてきましたが「1社だけで解決できることはほとんどない」と髙市はその実感を語りました。そして、分業化が進んでいる現代の経済界では、異業種が手を取り合うことが難しいと分析します。
「複雑な課題こそ共創する必要性が高い」と髙市。なぜならば、単独の組織では得られない視座を獲得できること、そして、人材や資金などのリソースを拡大させることができるからです。
しかし、だれが音頭をとるのか、仲間をどうやって見つけるのか、役割や費用をどのように分担するのか……。共創の第一歩を踏み出すためにはさまざまな障壁があります。
「0から1へ社会的価値を生み出すことの難易度は高い」としつつ、「だからこそGGPが支援する場を活用して欲しい」と髙市。「そのためには、近視眼的な協働ではなく、目指すべき未来像や価値観の共有が必須である」と強調しました。
出所:SMFG
課題解決の種を生み出し、そして社会への実装へ
「人々の意識や行動変容といったアウトカムを創出するまで、しっかりとやりきる」。髙市は、GGP共創プロジェクトの目標をそう掲げ、社会実装のためのプロセスを説明しました。
まずは、社会課題解決のための「種」を生み出すこと。これはプロジェクトでの調査や議論から生まれるアイデアに当たります。その次に、ただ議論で終わらせることなく、実証実験や政策提言、新規事業などの具体的な行動(アクション)につなげます。そして最後には、効果の有無を検証し、そこで得た成果を世の中に拡散していくことを狙います。
さらにその先には、事業展開に留まらず、モデル化して横展開をしていく姿を描いています。
出所:SMFG
「それが社会のスタンダードな取組みとなり、社会的インパクトを生み出すより高度なものになり、社会に好循環をもたらしていきたい。GGPの共創プロジェクトでは、点が面になり、面が立体となり、活動が社会に広がり、エコシステムを構築できるように進めていきたい」(髙市)。
出所:SMFG
「誰しもが気軽に、前向きなことに取り組むための支援の場としてGGPを活用していただきたい。社会を変えていく挑戦のお手伝いをGGPにさせていただきたい」と、締めくくりました。
相互信頼を醸成し地域課題を解決する——Community Drive プロジェクト
続いて、国内最大規模の建築設計事務所である日建設計の羽鳥達也氏が登壇。共創の先行実践例として、富山県黒部市の移動課題に挑む「Community Drive プロジェクト」を紹介しました。
羽鳥氏は、日建設計・設計グループ代表として「Toyota Woven City」などの大規模施設の設計に日々取組んでいます。その傍ら社内ベンチャーのプロジェクトとして立ち上げたのがこの「Community Drive プロジェクト」です。
なぜ、そのような地域の課題解決に挑むようになったのか、そのきっかけの1つは東日本大震災でした。
日建設計の羽鳥達也氏
被災地から学ぶことから始まった「逃げ地図」
2011年に起こった東日本大震災で、羽鳥氏が設計した建物の施工に関わってくださった、気仙沼の方々が津波で大きな被害を受けたことに端を発します。「被災地への支援物資を運ぶだけでなく、専門家として何かを考えて欲しい」。金属加工会社の社長にそう言われた羽鳥氏は、避難のための「逃げ地図」というものを考案しました。
これは、安全な場所にいち早く避難するための時間と場所を可視化したものです。
津波から避難するための時間と距離を可視化した逃げ地図。安全な避難場所を赤でプロット。3分で津波から逃げられる距離を緑の線(左上)、6分で逃げられる距離を黄緑(右上)9分で逃げられる距離を黄色の線(左下)、12分で逃げられる距離をオレンジ(右下)で示している 出所:日建設計
「どこにどう逃げたらよいかを示すためには、自分たちだけの知識では地図はつくれなかった。被災地の情報を住民の方々から教えてもらうところから始まりました。現地のワークショップでは、“教えてやろう”と住人が非常に協力的になってくれた」。羽鳥氏はそう振り返ります。
陸前高田市で行われたワークショップ 出所:日建設計
この逃げ地図はその後、事前復興にも役立つものとして鎌倉市など地方自治体の注目を浴び、全国に展開していきました。
また、本田技研工業がカーナビに搭載したり、逃げ地図研究会が発足したり、今では防災のためのツールとして定着し、活動の広がりを見せています。
本田技研工業がカーナビに逃げ地図を掲載 出所:日建設計
Community Drive プロジェクト
羽鳥氏は、逃げ地図の経験を経て、社会課題を解くための都市インフラに取り組むようになりました。
人口減少していく中で、インフラの更新をどうしていくかという重要な課題が全国的にあります。高齢化が進行している地方では、移動課題もまた深刻化しています。そうした問題意識の中、羽鳥氏は、日建設計総合研究所と共に「動くインフラ」構想を描いていました。
出所:日建設計
その調査研究の結果、インフラをモビリティに転換することで、国土面積98%、人口45%が住むエリアで、インフラを敷設する費用を1/3〜1/9に抑えることができる試算がありました。
出所:日建設計
そうした構想を描く中、日建設計東京本社に設置されている共創の場「PYNT」での出会いをきっかけに、一般社団法人SMART ふくしラボ、日建設計、図解総研が共創する「Community Drive プロジェクト」が2024年7月発足。
黒部市で、地域(Community)における移動を促進(Drive)する人材となる「コミュニティ・ドライバー」の発掘と育成、および必要になるプログラムやツール開発が始まりました。
行政、企業、地域住民などセクターごとに調査や対話を行い、課題を抽出 出所:日建設計
行政・民間・市民というセクター別にワークショップやヒアリングを実施。モビ地図というツールを開発し、移動困難の実態をていねいに調査することで、ライドシェアなどの具体的な道筋を可視化することに成功しました。
住人の移動実態の調査から、介護送迎を曜日別に対応することで解決する方法が見えてきた 出所:日建設計
「行政や住民同士の相互不信がさまざまなコスト高につながっている。実際に何が必要かを可視化し、相互信頼が高まることでストレスやコストが下がることが分かった。主体的に関わる人を増やしていくことで、新しい社会の制度を生むことにつながる」と、羽鳥氏はワークショップやヒアリングを通して対話の重要性を実感したことを語りました。
黒部のCommunity Drive プロジェクトは国土交通省モビリティ人材育成事業に2年連続で採択され、2025年は具体的なマイクロプロジェクトが進んでいます。広島県福山市でも2025年、プログラムを導入し、まさに横展開へとつながっています。
新たな価値を発信し、アイデアと熱量をもって取り組む
左から、棚橋氏、羽鳥氏、髙市
髙市と羽鳥氏のパネルディスカッションでは、GGP連携パートナーであるロフトワーク取締役の棚橋弘季氏がモデレータを務め、「共創に必要なこと」をテーマに議論を深めました。
立場の異なる多くの人が関わるプロジェクトでは、さまざまな視点からの意見が出てきて、対立する場面が生じます。
逃げ地図やCommunity Driveプロジェクトを経て「まず具体的なデータを可視化するなど、事実を確認することが大事」と羽鳥氏は対応策を示しました。事実に向き合うことで、情報格差をなくし、合理的な解決方法へ向かっていく——。実体験から得た知見です。
さらに人を巻き込み展開していく秘訣は「オープンに情報発信をしていくこと」だと言います。情報を発信したことから共感者が増え、さまざまな方向へと展開していったことを羽鳥氏は明かしました。
「プロジェクトが開始した後、効果的に推進していくためにはどのような工夫が必要か?」と髙市が問うと、「関わる人の主体性に任せること」と羽鳥氏。逃げ地図では、自分たちから展開するよりも、周囲の人がそれぞれのアイデアを展開していったことを説明しました。
また、GGPの2025年度の共創プロジェクトで取り組んでいる少子化の問題について「送り迎えの可否による子どもの体験・教育格差が生まれている。移動の問題と合わせて考えると、子ども達の可能性が広がるのではないか」と、新たな視点を投げかけました。「格差が生まれる前に対処できる価値は大きい。ぜひ考えたいテーマだ」と髙市も共感を示しました。
パネルディスカッションの最後に髙市は「業種・業界を問わず、熱量を持って、アイデアを戦わせてくれる団体に参加して欲しい」と2026年度のプロジェクト創出への意欲的な参加を幅広く呼びかけました。
新規性のある解決策を求めて
イベントの後半では、GGP事務局の岡本めぐみより2026年度の募集概要を説明。
取り上げるテーマの方向性として、課題の影響範囲が広く、多くの人々に関わる社会課題であること(社会的インパクトの大きさ)、環境・社会の持続可能性や、生活者の暮らし・将来に関わる本質的な課題であること(課題の重要度)だと伝え、想定例として、サーキュラーエコノミー、働く人のメンタルヘルス、賃金や教育格差の是正等を挙げました。
そして来年度の採択は2件程度で、①社会的インパクト、②新規性、③実現可能性、④共創性がテーマの選出観点であることを示しました。
GGPとしての支援内容、スケジュールは、下図の通りです。
出所:SMFG
| 募集期間 | ~2026年1月30日 |
| 一次選考(書類) | 2026年2月上旬 |
| 最終選考・結果通知 | 2026年2月下旬 |
| キックオフミーティング | 2025年3月上旬 |
| 結果公表 | 2025年3月下旬 |
| 共創プロジェクト正式キックオフ | 2025年4月下旬 |
それに続き、プロジェクトの具体的なイメージを伝えるために、2025年度に試行中のプロジェクトを推進した4人が登壇。
「少子化と向き合う社会デザイン」についてはGGP事務局の岡本めぐみと伴走企業ロフトワークの松本モモヨ氏が、「食と農の社会課題にどう挑むか」についてはGGP事務局の青山広樹と伴走企業である日本総合研究所の今泉翔一朗氏が、それぞれの活動の主旨と進捗を説明しました。
岡本めぐみ(左)は、なぜ少子化を課題としたのかその主旨を解説。松本氏(右)は、2026年初頭に予定している実証実験について説明
青山広樹(左)はプロジェクトの主旨と多重インパクトを生み出す施策の必要性を解説。今泉氏(右)はプロジェクトの進捗と今後の事業化について説明
GGPのWEBサイトでは、各プロジェクトの詳細を以下の通り報じています。これからの展開も引き続きレポートしていく予定です。
(文:有岡三恵/Studio SETO 特記なき写真:村田和総)
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動画再生時間:約131分
00:03:59 GGP紹介
00:06:36 イベント本編開始
